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図解土壌の基礎知識

新版図解土壌の基礎知識』藤原 俊六郎著 農産漁村文化協会 2013年2月

まとめ
・豊富なイラストを用いて理化学的な側面から土・土壌の特性を科学的に説明した
・農業活動の基礎となる土壌については感情論から記述される事が多い中で、イオンや分子レベルの知識を持って解りやすく説明した
・2011年の原子力発電所の事故によって拡散されたセシウムの対応にも触れる


コンポストと土壌

土壌とは何だろう、と以前から漠然と考えていた。鉱物が含まれているのは間違いなさそうだが、長い時間雨や陽の光に晒されても大きく特性が変化することはない。さらに、植物を育む「土壌」には「栄養」が含まれているはずなのだが、じっと土を眺めていても、果たしてどのような形でそこに存在しているのか、はたまた、存在していないのか確かめる事ができるのだろうか。

最近私は自宅のマンションのベランダで生ゴミを利用したコンポスト作りを始めたこともあって、土壌についてさらに知りたいと思うようになっていた。手当たり次第に手に取ってみた本のうちのひとつがこの本である。

コンポストを作っていると、土壌微生物の不思議さにはただただ驚かされる。少量のこめのとぎ汁を加えられた生ゴミが、真夏のこの時期なら数日で分解されてしまう。いわゆる栄養分は、イオン化された形で団塊化された土の間に存在している、らしい。なお、土壌には無制限にこれらの栄養分がとけ込めるのではなく、飽和点がある。これが陽イオン交換容量として計測できるのだそうだ。

そうしてみると、コンポストとしては無限に生ゴミを吸収・消化できるようにも見えるのだが、イオンレベルで見ると、一定容量の土壌には栄養分を保持できる一定の水準があるということらしい。


永続的な利用は可能か

本書では土から土壌がうまれ、次第に利用が困難になるまでの土のライフサイクルが説明されている。日本には田と畑があり、その性質は大きく異なる。田は長期的には鉄とマンガンが下層に消失して不適となるとある。一方、畑地は養分蓄積が進み、塩基バランスが崩れるという。田・畑を入れ替えることでこの両方の欠点を埋める方法を作者は提案しているが、求められる土質がずいぶんと異なるため、実践的であるのかどうかは不明。

永続性といえば、日本がホストする2020年の東京オリンピックに出される食事の材料は、グローバルG.A.P. -> Google検索

に準拠することを一部で目指しているそうである。しかしながら、日本の目指す農業とヨーロッパの目指す農業の方針に食い違いがあるため、完全なGAPに準拠した農作物を提供するのは難しいらしい。日本がともかく「食の安全性」を追求しているのに対して、ヨーロッパが主体となって作成されたこの基準では、土、土壌の安全性や永続的に利用できるかどうか、後から検証可能なように施肥記録なども保存することを義務付ける。なんともヨーロッパの官僚主義的でオーバースペックな基準であるけれども、長期的に見れば必要なことだ。成果物としての野菜の安全性には気をつけていても、その基盤たる土壌の長い目でみての健康性を保持することは当然の要請だ。
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オオカミがいないと、なぜウサギが滅びるのか

オオカミがいないと、なぜウサギが滅びるのか』山田 健, 知のトレッキング叢書, 集英社インターナショナル, 2015年6月

まとめ
・生態系の話から始まり、森林、土壌、農業のあるべき姿を語るエッセイ
・エコロジーとか、何か農業に関わりを持ちたいとか、問題意識を持っている方が読めば色々な想いが心の中で勝手に広がって行く本


生態系ピラミッドが壊れたら

日本人は愚かにもニホンオオカミを絶命に追いやってしまった。その結果、天敵を持たないシカなどが大繁殖し、食害のため生態系全体が大きく崩れてしまった。

もしかしたら、もう取り返しの付かない事態に進んでしまったのかもしれない。ひとたび崩れたバランスは、もう元の形には戻れない。ニホンオオカミの代わりはニホンオオカミにしか勤まらない。

私は、その一方で、もしや、とも思う。壊れた生態系は、新たなバランスの均衡を求めるものだ。増えすぎたシカのため餌が極端に不足すれば、自ずと頭数は頭打ちになる。だがシカの頭数が頭打ちになるまで自然の摂理に任せて何もしないで良いのだろうか?何もしない間に山野は丸裸になってしまう。各地のシカの害が言われて久しいが、さりとて決め手となる対策は皆無である。シカにしか罹らないような特殊なウイルスが蔓延して頭数が激減することを勝手に祈るしか無いのが現状である。

ところで、人間もまた生態系の一部である。増えすぎた人口を減らすため、コレラやチフスなどの疫病が過去に何度も発生した。だが人間はそれらを克服してきた。生態系からの離脱を求める人間の希求が、人間をゆっくりと、だが確実な危機へと導いているようにも思える。


生態系ピラミッドの底辺を支える土壌

土壌の生態系は私のような都会のマンションに住む者であっても実感することができる。

私の住むマンションのベランダでは、花やハーブなどを少し育てている。今年はこれに加えて、生ゴミによるコンポストを始めてみた。

コンポストといっても、至って簡単なもの。ホームセンターから買って来た培養土が入っていた袋に、花を育て終わった後に排出される残土を貯めて、これに日々の台所から排出される野菜くずなどを混ぜていくだけである。少量の米のとぎ汁を混ぜ、陽の光を数時間だけでも浴びせると、微生物の助けも借りて、袋がほっかほかになる。

これが、ことの他、面白い。花や野菜を育てることよりも、「土」をつくることがこれほど面白いとは思わなかった。こんな簡単な体験からでも見えて来るものがたくさんある。


兼業農家はあるべき姿か

趣味として野菜や花を育てるのと職業とするのはまったく別と私は考える。本書で山田健氏は兼業農家的な緩い農業の手法を推奨されているけれども、これには私は賛同出来ない。農業のプロの中には究極の「無農薬 無肥料 不耕起」を実践されている方もおられる。それがいつでも正しいという訳では無く、研究・観察など不断の努力の結果なのである。もしかしたら正しい方法とはそれぞれの人、土地、農作物によって異なるのかもしれない。それを片手間の趣味もどきで取り組む人が達成できるとは考えられない。本書で山田健氏が語っているのはユートピア論であって、そのまま実践につながるものではないと考えるべきだろう。


洗練された企業PR活動

当初はサントリーの企業イメージ向上戦略の一環を担っているのは間違いないし、山田健氏はこの著作の中で明に暗にサントリーの宣伝も行っているが、悔しいかな、山田氏の語りは嫌みを感じさせない。これは創業者鳥井信治郎氏以来の同社の伝統なのだろう。

ところで、阿蘇山の麓にある同社の工場は昨年(2016年)の熊本地震で大きな被害が出た。


復旧は2016年11月になった→ サントリー熊本工場 被災設備を復旧、ビール製造再開

災害の復興には企業が雇用を継続することがなにより重要である。

なお、本書では九州大学とタイアップして熊本県益城町にて「冬水田んぼ」の実験をした件が報告されている。
水の都 熊本の地下水涵養に「冬水田んぼ」で貢献する

上記の記事は2013年の記事である。2016年の地震が影響を与えなかった訳が無いと思われる。継続的、長期的にこのような調査を継続して戴きたい。

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Kiankou book reviews ご参考リンク
『水を守りに、森へ 地下水の持続可能性を求めて』山田 健, 筑摩選書, 2012年1月

日本経済を「見通す」力

日本経済を「見通す」力 東大名物教授の熱血セミナー』 伊藤 元重 (著), 光文社新書, 2015年6月



日本経済に関する主要な問題を俎上に乗せ、明快に解説する。その論調は非常にすっきりしているので概要を理解するためには役立つ一冊である。ただし、そこで解説される内容は表面を撫ぜるように終始するため、個々の問題について掘り下げて理解するには少々物足りない。日本経済入門のための一冊と理解すべきだ。

第一講義。名目と実質の違いについてこれほど明快な解説を聞いた事が無い。「失われた20年」の間、人々は銀行の預貯金を増やしていたのが、結果オーライであったとの解説を聞いて意外に感じる人が多かったのではないだろうか。この間のデフレ期は株式などに投資しポートフォリオを多様化するように、と散々に聞かされ続けてきた日々であったのだが。為替レートにも「名目」と「実質」があるとのことで、これは眼から鱗が落ちた。通常は円の対アメリカドルの為替変動にて過去との比較を論じ、理解することが多いものであるが、その見方は欠点の多いものであることを理解した。

日銀の政策については後追いで追認しているような感触が否めない。デフレ期に現日銀副総裁に岩田規久男氏が過激な論調で日銀と政府の政策を批判していたとき、この伊藤氏はどのような発言をしていたのだろうか。

第二講義。国家破綻リスクについては「ユーロ圏」についての理解なしには語れないと思うのだが、それについての解説が少ないため、一般論に終始している。

日本国債については88ページにあるとおり、ずっと金利が下降傾向にある。これほど安定しているのに、格付け会社が日本の国債の信用度を低く評価していることが正直私には理解できない。ただ、本書によると、これだけ過去最低水準の金利を続けていると、0.数%の変化(上昇)でも価値(価格)の低下が大きく影響を与えるとの指摘はなるほど、理解できる。

社会保障費が高いことに問題があるのは明確。ただ、この問題は余りにも大きすぎて、本書だけでカバーしきれる問題ではない。

慢性病的な患者は医療扱いするなというのは現場でも前から理解している。問題は受け皿が無いこと。そもそも、医療に対する国民の意識を大きく変えることが必要だ。基本、医者にはかからないように国民をきちんと理解させる。現在の医療制度では国民が病気に罹り、薬を出さないと儲からない仕組みがそもそも問題だ。国民が病院に行かなければ行かないほど病院が儲かるような仕組みを作ればよい。

第四講義。中国のバブルがこれまでの他の国の形とかなり異なる点は本書にてよく理解できた。中国問題は経済問題というよりも、多分に、政治問題だ。



商店街はいま必要なのか

商店街はいま必要なのか 「日本型流通」の近現代史』 満薗 勇(著), 講談社現代新書, 2015年7月


本のタイトルこそ問いかけの形となっているが、満薗氏は近現代の流通形態の変遷を歴史学の立場から論じている。百貨店、大型流通店、コンビニ等の変遷のある中で商店街についても扱うというスタンスであり、流通形態における商店街を読者は客観的に位置づけるのに役立つだろう。

そこで買いたいとは思わないが、コミュニティーの担い手としてあってほしいもの。コンビニや大型店舗では得られないもの。地縁的な結びつきの核となるもの。消費生活を満たすためだけでなく、心情的な結びつきを人々は求めている。

商店街の担い手については、新 雅史氏が『商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道』光文社新書, 2012年5月にて詳しく論じていた。核家族中心の担い手による商店街は、やがて消えいく運命にある。大型店の進出によりひとつの役割は終えた存在だ。

それでも商店街を必要と考えるのは、コミュニティーの担い手が不在だからだ。PTA, 子ども会、町内会など、子供を持つ家族であれば地域の中に組み込まれていく。ところが「おひとりさま」の増加がこれを難しくしている。東日本大震災など、大変な事態でも起こらない限り、胡散臭いコミュニティー活動を維持する必要性が感じられないのだろう。

時には、『小布施 まちづくりの奇跡』川向 正人,新潮新書,2010年3月で見たような、商店街の機能が高度に成功した事例も時には存在するが、これは例外に属する。このほかにも商店街を再生させた事例を紹介する自称「地域再生コンサルタント」の本が出回っているが、かなり眉唾なものもある。

コミュニティー再生はどうあるべきか。現代の難題の担い手の候補のひとつが商店街であることは間違いなさそうだ。


危機を突破する力

危機を突破する力 これからの日本人のための知恵』丹羽 宇一郎(著), 角川新書, 2015年6月


伊藤忠商事の社長を経て、中国大使を経験した丹羽 宇一郎氏の人生訓話。

ビジネス界でひとかどの成果を残した人の訓話は自慢話が多く、概してつまらないものだ。この丹羽宇一郎氏の著作は努めて自らの失敗談を盛り込み、実物大、等身大の自画像を描こうとする努力が随所に垣間見られる。その試みは結局のところあまり成功しているとは言えないが、それはこの方の一途な正義感から来るものであろう。この方は元来上品な方なのだと思う。

読書の話題が随所に盛り込まれている。この方のゆるぎない信念は読書を通して育まれたものだ。私自身、少年少女世界文学全集の読書から始まって、以来本との付き合いは非常に長いだけに、丹羽宇一郎氏の語る世界には親近感を覚える。

丹羽宇一郎氏は読書の度にノートを付けているとのことだが、私が最近実行しているのは見ての通り、ブログに書評とも感想文といえるような、いえないような、雑文を書き連ねている。紙のノートに書いてしまうとどこに書いたか忘れてしまう。文書をパソコンで書いたにしてもハードディスクに保存してしまうと、そのうちどこに置いたか忘れてしまう。ネットにおいておけば、Googleの検索機能を使って自分の過去の文章を検索して探し出すことが出来る。これは便利だ。

丹羽宇一郎氏がまだ若かった頃、サラリーマンとしては看て看ぬふりをする人が大半の中、直属の上司の不正を暴いて人間関係を悪くする。半沢直樹がここに居た。

先物で大赤字を出しそうな場面から一転、黒字を出す展開も半沢直樹並みにドラマチック。本人ではなく、上司がどこまで腹をくくれるか。人間力が問われる。

尖閣諸島の国有化宣言直後の中国大使時の丹羽宇一郎氏の発言が、日本で受け容れられなかったのはその発言が「日本バッシング」をまさに行おうとしている中国を利するからであった。中国の大使となるからには、日本の外務省が説明している尖閣諸島に関する日本の公式な見解を踏まえた上で慎重に発言されるべきであった。本書では「尖閣諸島」では中国に領土として譲る気持ちは無かった」と書かれているが、それは後の祭り。メディアは大物の「失言」を常に狙っているのである。正義の士丹羽 宇一郎さんは、きっと、政治家には向かないのだろうと思う。


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Kiankou

Author:Kiankou
新書・新刊・社会科学・自然科学・経済・青春小説・エッセイ・思想・教育・児童・絵本・書籍の読書感想、書評、レビュー。
新書入門、文庫入門で何を読もうかと迷っていらっしゃる方にも、ご参考になれば幸いです。profile


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