FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

高度成長 シリーズ日本近現代史 8

高度成長 シリーズ日本近現代史 8』武田 晴人, 岩波新書, 2008年4月


1956年の経済白書で「もはや戦後ではない」と書かれたことは多くの著書で引用されている。だが、これの元の意味が、「戦後的な急速な発展は望めないので縮小が望まれる」との意味で書かれていたとは知らなかった。事実はこの経済白書の予想を完全に裏切り、怒涛の経済成長を遂げたのである。

高度成長を歴史の視点からどのように捉えるべきか。大胆な仮説から大きくものごとを視る視点が必要だ。この時期は歴史としての評価の定まっていないだけに、独創的な発想を自由に表出する力量が求められる。

武田晴人氏は多様な価値観が経済・政治・社会にダイナミックに現れた時期としてこの時期を捉えているようだ。複雑な動きが同時多発的に発生する混沌とした状況は捉えられているようにも思うが、幕末から明治・大正・昭和、そして終戦に至るまでの日本の歴史の流れと、このあとの時期に控える停滞期・ないしは成熟期との比較においてこの高度成長期を捉える視点を見せて欲しかった。

少々先走るようだが、この岩波新書の日本近現代史第9巻を書いた吉見俊哉氏はその冒頭で高度成長を「戦前から続く戦時総力体制の続き」と書いている。これ自体は目新しい視点ではないにせよ、戦後の高度成長が戦前・戦中から準備されていたと看做す見方は歴史が一貫として流れていると捉えることができるので好都合である。

幕末の江戸の人口は世界的にみて最大級だったと言われている。人口を養うための産業の創出が明治以来の重要な課題だった。海外へと進出・侵略したのも国内には十分な資源が無いとの強迫観念が支配していたからである。

敗戦でその倫理的な方向性に間違いが指摘されるや、今度はそのリベンジとばかりに非軍事的な側面に特化して成長を目指した。国を挙げて産業の新興に勤しみ、驚異的な復興を遂げたのは、まさしく明治維新以降の挙国一致体制が継続していたためと看做すことができる。

この時期の問題点のいくつかは明らかである。

戦争の原因・責任を国民と指導者がきっちりと意識することが無かったため、後々まで日本を苦しめている。戦争を被害者の立場でしか感じられない見方は戦前・戦中政府による情報操作と秘匿が原因のひとつである。

福澤諭吉が批判していたように、社会の問題を自分の問題として引きつけて考えるものの見方が日本に育っていなかったことにも責任の一端がある。人任せ、お上任せの民衆は眼の前のことにしか興味を抱かない。

マイホーム主義や個人主義といった形で庶民の政治意識はこの時期も相変わらず高くない。だが、武田 晴人氏が本書で紹介している「ベ平連」に見る緩い社会的なつながりは、今日のSNSによるつながりと本質的に同類である。既存の政治体制の枠組みでは捉えきらず、個別のイシュー毎に賛成・反対を表明するような政治活動は、将来につながるものだ。これだけ価値観が多様化している中で、1つか2つの政治団体のみに支持を集約せよというのは現実性が薄いのではないだろうか。たとえば、選挙時には党として結束するとしても、個別の法案の可否については、党則で縛るようなことをせず、党員による自由な投票をもっと認める。そんな新たな政治の枠組みを創設する智恵が必要だ。



---
Kiankou書評 岩波新書 シリーズ日本近現代史

井上 勝生『幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1』岩波新書, 2006年11月
牧原 憲夫『民権と憲法 シリーズ日本近現代史 2』岩波新書, 2006年12月
原田 敬一『日清・日露戦争 シリーズ日本近現代史 3』岩波新書, 2007年2月
成田 龍一『大正デモクラシー シリーズ日本近現代史 4』岩波新書, 2007年4月
加藤 陽子『満州事変から日中戦争へ シリーズ日本近現代史 5』岩波新書, 2007年6月
吉田 裕『アジア・太平洋戦争 シリーズ日本近現代史 6』岩波新書, 2007年8月
雨宮 昭一『占領と改革 シリーズ日本近現代史 7』岩波新書, 2008年1月
武田 晴人『高度成長 シリーズ日本近現代史 8』岩波新書, 2008年4月
吉見 俊哉『ポスト戦後社会 シリーズ日本近現代史 9』岩波新書, 2009年1月
岩波新書編集部『日本の近現代史をどう見るか シリーズ日本近現代史 10』岩波新書, 2010年2月
スポンサーサイト

テーマ : 新書・文庫レビュー
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

Profile

Kiankou

Author:Kiankou
新書・新刊・社会科学・自然科学・経済・青春小説・エッセイ・思想・教育・児童・絵本・書籍の読書感想、書評、レビュー。
新書入門、文庫入門で何を読もうかと迷っていらっしゃる方にも、ご参考になれば幸いです。profile


いろいろなおすすめリスト

週間人気ページランキング


Twitterボタン

Latest journals
Search form
Latest comments
Latest trackbacks
Monthly archive
Category
Link
twitter
Display RSS link.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。