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自分のなかに歴史をよむ

自分のなかに歴史をよむ』阿部 謹也, ちくま文庫, 2007年9月


先日休筆宣言をしたばかりなのに、さっそく方針変更...? まあ、自分の書いたことには縛られないようにするつもり。そもそも、方針はよく決めていない。まったりとお付き合い戴ければ幸いです。



その休筆宣言をする直前に、このブログで西尾 哲夫氏の『世界史の中のアラビアンナイト』(2011)を採り上げた。その際に、ふっと頭をよぎったのが阿部 謹也氏の『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』(ちくま文庫, 1988)である。『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』は以前読んだことがあったのだが、私がブログの書評を始めるより以前だったので詳しい内容までは覚えていなかった。だからあの『世界史の中のアラビアンナイト』の書評の中ではうまく絡めて書ききれなかった。そうこうするうち、阿部 謹也氏の別の本を今回読んでしまったのだ。どうにも気になって仕方が無い。このまま休筆明けまでこの原稿を暖めておくのもひとつだが、めんどうなのでこの際公開してしまえ、と相成った次第である。

『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』はアラビアンナイトとは直接関係が無い。阿部 謹也という中世ヨーロッパの歴史を研究されている方が、ふとしたことから「ハーメルンの笛吹き男」の伝説の謎と魅力に取り付かれ、ハーメルンとその周辺のドイツ民族の歴史を多方面から分析することに至った経緯が詳しく書いてある本である。

1284年6月26日、ハーメルン市から130人の子供が居なくなる。これは史実であることはどうやら間違い無い。ところが、その理由を記されたものが残っていない。後の研究者が様々に憶測を重ねるが、決定的な証拠は得られない。

「ハーメルンの笛吹き男」の伝説は、形を変えて様々な形で伝承されていく。グリム童話に採られているものは、笛を吹いてハーメルンの鼠退治の謝礼に渋ったため、男が笛を吹いて町中の子供たちを浚っていったというものになっている。


この話が単なる民話と違って興味深いのは、子供たちがいなくなるという中心的な史実が存在するという点である。後からこれを語る人は、そこに様々な物語をつけ加えた。『アラビアンナイト』は史実を元にはしていないであろうが、さまざまな形で派生されていく過程が非常によく似ている。民族の風習や考え、ないしはその時々の政治的な事情に左右されているのである。

この『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』では様々な過去の研究の成果や可能性を示しつつ、最終的には子供たちの失踪の理由を突き止めるには至っていない。それにもかかわらず、この本は人を引きつけて止まない。歴史研究家が余興で行った研究なのかもしれないが、実は歴史研究の重要な側面を示しているように思われる。支配者の歴史ではなく民族の、ひとびとの歴史。それは民俗学的な研究にもとづくものになるのだろう。ひとびとの歴史を知ることこそ、歴史学習の究極の目的の一つであろう。

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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Kiankou

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