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ひとの目、驚異の進化 4つの凄い視覚能力があるわけ

ひとの目、驚異の進化 4つの凄い視覚能力があるわけ』マーク・チャンギージー, 柴田 裕之(訳), インターシフト, 2012年10月


原題: "The Vision Revolution: How the Latest Research Overturns Everything We Thought We Knew About Human Vision", Mark Changizi, 2009


神経科学者で視覚を専門に研究するマーク・チャンギージー氏が人間の視覚のもつ4つの性質について著した一般向けの啓蒙書。専門の研究を土台としつつ、一般の読者が楽しみながら読めるように工夫されている。


ヒトが色の識別機能を発達させたのは相手の感情を読むためであるとの仮説を主張する第1章。なるほど、ヒトの顔は毛が生えておらず、つるんとしている。もし顔が毛に覆われていたら、相手の感情が表出された「色」を見ることが難しい。ここまでの話であれば進化生物学者の著作にもよく書かれている内容。マーク・チャンギージー氏のユニークな点は、感情の変化が顔に生じた際の特別なスペクトルが読み取れるように目が進化したと指摘し、立証している点である。これは大変興味深い。

生物進化という面で見た場合、人間は霊長類の中で、体毛が非常に少ない動物だと動物行動学者の日高 敏隆氏が以前指摘していた→『ぼくの生物学講義―人間を知る手がかり』昭和堂, 2010年10月これももしかしたらマーク・チャンギージー氏の指摘した色と感情の読み取りの機能を進化させた結果として説明がつくかもしれない。


第2章では目が2つある理由について掘り下げて考える。離れた位置に置かれた2つの視点により、相互の視覚を頭の中で組み立て直し、補正して考える力があるとの説明。この分析自体は古典的で特に目新しくない。機能だけを考えれば、後方の視覚が得られるほうが有利なのに、我々人類は前方方面の視覚のみを発達させてきたのは何故か。それは、ヒトが透視能力を重視したからだ、とマーク・チャンギージー氏。仮説としては面白いのだが、立証例を重ねてさらに研究を重ねる必要がありそうだ。


第3章、錯覚について扱う。この本の中で一般の読者にはここが一番面白い部分だ。人は実際に見ているようでいて、実は見ていない。運動を連想させるような視覚的な効果があるとき、人はそこに運動した結果を折り込んで視てしまっている。マーク・チャンギージー氏はここで「錯覚の大統一理論」として説明しているのがその内容である。

錯覚が発生する図形はこれまでに多く発見されている(→ご参考: 一川 誠『錯覚学 知覚の謎を解く』集英社新書, 2012年10月)。ところが、錯覚を発生させる理由についてはよく分っていないと一川 誠氏が書いていた。

マーク・チャンギージー氏はこの本で錯覚を起こす図形の性質として、「運動」のシンボルとしての錯覚画の性質を挙げている。ヒトは先を見越してみる性質がある。運動のシンボルがあると、実際に見えているものの先の形を想像してみてしまう、ということらしい。これをマーク・チャンギージー氏は「錯覚の大統一理論」と呼んでいる。

ただ、一川 誠氏の著作でも挙げられていたミュラーリヤー錯視とポンゾ錯視の例をみるとわかるように、運動とは無関係の錯覚、錯視が存在する。人間の網膜は2次元でしか知覚できないように作られている。3次元物体を2次元に見立てたときの視点の位置の関係から、頭の中で距離を補って見ている。この過程で錯覚を呼びおこしている。

「運動」や「立体から平面」といった頭の中で行われる補正機能こそがどうやら錯覚の正体(の一部)であるようだ。


第4章は文字表記と実際に視るものとの関係。少々チャレンジングな内容である。この分野はもしかすると日本のほうが研究が進んでいるのでないだろうか。漢字の成立過程の研究成果を付加すれば、この第4章はさらに考察が深まるだろう。

日本語との関係で私が少々興味深く感じたのは本書261ページの図15である。実世界に存在する画像と文字表記との視覚的記号との相関を論じたものなのであるが、かな漢字混じり文との関係が私には何かヒントがあるような気がしている。

漢字が多すぎる文章は読みづらい。一般的には漢字を3割くらいに抑えたほうが読みやすい文章だと言われている。学術論文を別にすれば、人に読んでもらうためには敢えて漢字を減らしてひらがなを増やすほうがよいと経験的にいわれている。マーク・チャンギージー氏が挙げた自然界に存在する画像との関連が実に気になるのである。


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Kiankou書評 ご参考リンク

下條 信輔『サブリミナル・インパクト 情動と潜在認知の現代』ちくま新書, 2008年12月
一川 誠『錯覚学 知覚の謎を解く』集英社新書, 2012年10月
マーク・チャンギージー, 柴田 裕之(訳)『ひとの目、驚異の進化 4つの凄い視覚能力があるわけ』インターシフト, 2012年10月
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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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