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日本銀行

『日本銀行』翁 邦雄, ちくま新書, 2013年7月

第二次安倍政権の登場に前後して、何かと多くの話題を提供する日本銀行。本書は日本銀行の基本的な役割や歴史的な背景とその時々の政策を振り返りつつ、日本銀行を批判する視点と擁護する視点を交互に織り込みながら、全体像を探ったものである。

私は現日本銀行副総裁の岩田規久男氏の著作を多く読んできたことから、どちらかというといわゆる「リフレ派」の主張に共感を覚えている。現在でも基本的には岩田規久男氏の主張するところは間違っていないと私は考えている。

現総裁の黒田氏は日銀を批判する立場からトップに就任している。これは政府の要望を強く反映させることに主眼を置いた措置であり、いわゆる非伝統的な金融政策を進めるにあたっては力強い体制となっている。デフレ脱却の場面においては、政府と日銀が一枚岩となってつよいメッセージを送ることが何より重要だ。これは過去の日本銀行と政府の軋轢が日本銀行への批判を生み、全体として政策がうまく機能しなくなった過去の経験から学習しているのだろう。

過去の日銀および政府の政策を本書で振り返っているのだが、政策は常に後手後手に回っている。引き締めるべき時期になっているというのに、やっと緩和の政策が動き出すなど、至って行動が遅い。これは日本的な意思決定システムの遅さに原因がある。

グリーンスパンは日本の失敗を見つつ、速度が重要であることをよく心得ていた。もっとも、日本とアメリカの不況は原因が異なる。日本のバブル崩壊は、いまだに尾を引いている。

中央銀行の独立性については岩田規久男氏が非常に鋭い批判を続けていた。インフレ期には、ハイパーインフレへの懸念から金融政策に一定の歯止めが必要との認識は理解できる。だが、デフレ期にはこれが全く作用しない。中央銀行は単独ではデフレと戦うことは出来ず、必ず政府のバックアップが必要だと本書からもその思いを確かにした。

現政権の政策について触れているのが最後の章。翁氏はデフレ脱出の条件として、収入のアップと、出口戦略の明示を挙げている。今年4月に大手企業では久しぶりにベアアップが実施された。景気の先行きへの期待が民間企業の協力を得たものだ。その足元の景況感は不安定要素が多く、まだ予断を許さない。

翁氏の挙げる出口戦略についてはこれからの政策の取り方として是非実践していくべきだ。異次元の金融緩和の政策を採るのは良しとして、これまでのやり方のまずかった点は、それがすでにな政策となっているにも関わらず、機敏な軌道修正が出来なかったことにある。

--以下2014年12月24日追記--


第2章。主要中央銀行がトラウマを抱えているとの翁 邦雄氏の指摘は記憶にとどめておこう。アメリカは1929年の大恐慌と1970年代のグレートインフレーション。「この二つのトラウマが絡み合っていることは、米国の金融政策状況を複雑にすると同時に、ある種のチェック・アンド・バランスとして作用している。page 044」

第5章。高度成長期の日本は「外貨準備」だけを見ていれば良かったというのが、時代を象徴しているように見える。外貨が少ないため、物は外国からは買うことが出来ない。私が小学校の時には、「日本は資源が無いのだから、資源を輸入し、加工し、輸出する貿易立国にならなければならない」と教わったものである。

第9章。現在の「異次元緩和」が果たして財政の持続可能性を確保しているかどうか。現在の政治状況は歳出の抑制を放棄したように見える。私もこの点を最も危惧している。恐れるべきは、超高齢化社会そのものではなく、私たちの「給付」に依存する体質への変化である。

膨らみ続ける社会保障、社会保険の削減は待ったなしなのに、誰も火中の栗を拾おうとしない。日本はなぜこうも箍がはずれたように給付に甘い社会になってしまったのだろうか。

日本人はもともと、「働かざるもの食うべからず」の思想が深く浸透している社会であったはずである。江戸時代には「5人組」が隣近所が相互に監視しあい、怠け者を作らない工夫があった。「恥」の文化も怠け者を作らない工夫であった。

こういった文化は、相互が顔を見合わせることのできる社会ではうまく機能する。しかしながら、中途半端に個人主義や家族主義が蔓延り、以前のような相互に監視しあう社会慣習が無くなってしまった。加えて、自己増殖する強力な官僚制度が膨張する一方の給付制度を無限に後押しする仕組みが確立してしまった。

どこかで、必ずリセットが必要だ。ソフトランディングは無いと思え。公共部門も、会社への勤め人も、そして、家庭に収なり安泰な生活に甘んじている家庭の主婦にも、それぞれが新しい社会へ向かえう気構えを要求している。

先日の衆議院選挙でも感じたのだが、今本当に必要なのはアベノミクス路線への同意ではなく、来たり来る嵐への心構え、身構えだ。無いものねだりをしても仕方が無いが、社会を変えることのできるのは政治のプロセスのみだ。甘い近未来の戯言でなく、厳しい将来を見越して現在に大鉈を振るうことの必要性をじっくりと説く行動力のある者が待望される。

第10章。この本が出版された後、状況は刻一刻と変化しつつある。米国は出口戦略を慎重に練り、実行に移しつつある。一方で日本は出口を論じるのはタブーとばかりに異次元緩和を進めている。この先、この今の低い利回りのまま国債は買われ、売られ続けるのであろうか。

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