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国家はなぜ衰退するのか(上)

『国家はなぜ衰退するのか(上) 権力・繁栄・貧困の起源』ダロン アセモグル (著), ジェイムズ A ロビンソン (著), 稲葉 振一郎(解説) (その他), 鬼澤 忍 (翻訳)


【包括的政治制度と経済制度】

本書の冒頭、アメリカとメキシコの国境の町ノガレスが紹介される。私も以前アメリカ側からメキシコ側へ車で国境を越えたことがあり、この筆者と同じ思いを抱いた。メキシコに一歩踏み入れた時点で景色が一変するのである。明らかな経済力の差異。この違いはどこから来るのか。

上巻を読み終えた時点でのまとめとなるが、本書は次の一文に要約される。

「国家が衰退するのは、収奪的な政治制度に支えられた収奪的な経済制度を持つ時だ( pa ge 125)。」

これと反対なのが包括的政治制度に支えられた包括的政治制度ということになる。筆者は後者の代表として名誉革命をなし得たイギリスが、自由財産に裏打ちされ、戦争に恐れる必要の無い社会で産業革命をなし得たかを説く。エジソンが成功をなし得たのも安定した社会が基盤である、との主張である。

この非常に単純化された仮説は、歴史とそれに続く現代の社会を読み解く上で非常に強力な武器となる。この仮説をもとに、筆者は様々な歴史を読み解いていく。


メキシコなど中南米の国の辿った歴史と、合衆国の差異。物質の豊かさや貧しさはあまり関連がない。貧しい国は、一部の裕福な層が社会制度を牛耳り、経済的な自由を認めさせない。一部のものだけが豊かになる構図である。

本書ではメキシコに続き、多くの場面をこの同じ切り口で説明する。マックスウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』についても一刀両断にダメ出しする。たしかに社会の繁栄は個人の精神力「だけ」ではなんともならない。


【中国】
中国についての筆者の意見は結論を出していない。「創造的破壊」が成しうるのかどうか。一党独裁の共産党がどこまでそれを受け入れるか。現在の社会情勢をみても、非常に不確かである。

中国は国レベルとしては社会の繁栄をつかんでいない。個人的な経済繁栄を長らく国内で享受出来るとは誰も信じていないからである。みな、海外への脱出を望んでいる。そのような国家で、国への貢献が行われるとは思われない。共産党が現在の社会体制を維持する限り、変化はない。

【日本について】

私の考えでは日本についてもこの図式が適用可能であると考える。ただし、この筆者の分析は少々正確さを欠くのではないだろうか。

第4章で日本についての記述がある。筆者によると、江戸幕府は独裁的な社会制度であったが、ペリー来航を機会として、包括的政治制度への革命を成功させ、この結果人々の経済的繁栄に対するインセンティブが刺激されたと解釈している。果たして、明治維新は「革命」であったのかどうか。

徳川幕府は変革を求めなかった。この意味では封建的であったといえる。人々に海外への渡航や外国との通商も厳しく制限した。変革が社会に騒擾をもたらすとの考えによるものである。ただ、これが搾取的であったといえるかどうか。

徳川の治世が長く続いたのは武力ではなく、徳に裏付けされた武威でったと山本博文氏が書いている。→『鎖国と海禁の時代』山本 博文, 校倉書房, 1995年6月 http://kia357.blog125.fc2.com/blog-entry-786.html


イギリスの名誉革命のような信託制度ではないが、社会が習慣的な制度として徳川の封建制度を受け入れていた、と言えなくもない。

江戸時代が終わり、明治維新に進んでいったのだが、社会は一足飛びに包括的政治制度を持つには至らなかった。個人の経済的なインセンティブも非常に限られたものだった。真の意味での革命は、第二次大戦の終戦を待たなければならなかった。


なお、日本については支配する側、される側という単純な図式ではなく、その中間の「官僚制度」が非常に発達している。官僚は支配側のエリートであるが、立場的には「公僕」の位置付けである。今日、彼らが自分自身の護身のための制度をせっせと作り、国民は彼らに搾取されていると批判する向きもある。


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