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タックス・イーター

タックス・イーター 消えていく税金』志賀 櫻(著), 岩波新書, 2014年12月


志賀氏は大蔵省出身の官僚であるにもかかわらず、歯に絹着せぬ言い方で官僚を批判する。その物言いは痛快である。これだけ腰の据わった批判を展開するにもかかわらず、経済産業省の古賀氏のように上司から仕事が干されてしまったというようなこともなさそうである。志賀氏の得意とするところは法律的な基礎思考回路を元に、論理的に物事を捉えるものの見方である。

タックス・イーターの分析に入る前に志賀氏は納税者の心構えとして税の使い道をチェックするのが義務であると説いている。当たり前のこととして読み過ごし勝ちであるが、これは非常に重要な視点である。普通のサラリーマンは源泉徴収と年末調整の仕組みが完備しているため、自分の税金や厚生年金、社会保険費についてはほとんど無関心であろう。せいぜい、生命保険や家のローン残額から計算される還付金に一縷の希望を託す程度である。私もそうだった。とても税金や国の制度を詳しく知ろうなどとは本気では思わなかった。これが一番意識されるのは、会社を辞めて自分で国民健康保険や国民年金を払う段になった瞬間である。特に、国民健康保険にはあっと驚く高額の請求に腰を抜かすこと請け合いである。国民健康保険の制度がすでに崩壊していると即座に私は確信した。

納税者としての権利意識を覚醒させるには、いちどサラリーマンを辞めて、個人事業者をやってみると良い。税には様々な種類があり、また、志賀氏が詳しく論じている例外規定が山のようにあることにすぐに気づく。ひとつひとつの例外規定に、官僚や政治家の思惑が宿る。たとえば個人事業者の場合、小規模企業共済という制度が認められており、この掛け金は非課税となる。青色申告は国から認められた公の制度である。利用しない手はなかろう。これを以って私が知らず知らずのうちに"tax eat"に手を染めていると言われても、困る。自分の生活の防衛のためには、税の仕組みの理解を深める事が重要であり、結果的には、いかにすれば税金を払わないで済むか、その知恵を絞ることになるのである。非常に罪深い構造である。

官僚が自らの保障された身分を自分から放棄できないのもある意味当然である。省益と自らの利益を最大にすることが彼らの至上命題なのである。とはいえ、今時「戦争」を勃発させて解消を図るという訳には絶対にいかない。

一般会計のうち最も構成比率が高いのは、社会保障費であることは鈴木亘氏の著作等により指摘されているので了承している。本書で志賀氏は、社会保障費の実態は一般会計に計上された30兆円を優に上回り、給付額は100兆円に達すると書いている。この詳細については志賀氏は明らかにしていないが、財務省の以下のページの情報を根拠にしているのではないかと見られる。

今後、社会保障の費用は、どうなっていく? : 財務省

社会保障給付費 社会保障53.5億円、医療36兆円、介護福祉他 21.1兆円、計110.6兆円

財務省の上の「社会保障給付費」の定義もよく分からないが、国の一般会計を優に上回る額が給付されていることはなんとなく理解できる。

志賀氏も指摘しているように、一般会計のほかに、特別会計があること自体が問題だ。さらに、地方公共団体も似たような名目で社会保障費に含まれる額を給付している。どれがどこにどれだけ支払われているか、正確に把握するのは極めて困難だ。

現状を明確にするための最初の1歩として、一般会計と特別会計をマージしてみたらどうだろうか。

官僚や、公共法人、地方公共団体などが税金や財政投融資に群がる構図は理解できる(頑としてその現実は許しがたいが)。だが、タックス・イーターはもっと意外なところにいる。たとえば、鈴木亘氏は幼稚園・保育園の支援費の名目で、不必要に支払われていると指摘していた。「子育て支援」といえば支援されるべき対象として聞こえは良いのだけれど、その実、幼稚園や保育園に子供を預けるための費用を全ての人に支援すべきかどうかは議論の残るところである。ばら撒きで支援してしまうと本当に支援が必要な、低所得層への支援が届かなくなる。

概して、政府(官僚)はおせっかいすぎる。法律を作って、自らの権益を伸ばすばかりで、国民の利益は2の次なのではないかと勘ぐってしまう。

目下日本の最大の課題は社会保障費と医療費である。待ったなしに改革をすすめる必要がある。ちなみに両方とも厚生労働省の管轄だ。厚生労働省は、自らの権益だけでなく、受益者の中にいるタックス・イーターを巻き込んで、現状変更の阻止を狙っているのである。

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Kiankou books review ご参考リンク

『社会保障の「不都合な真実」 子育て・医療・年金を経済学で考える』鈴木 亘,日本経済新聞出版社,2010年7月



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Kiankou

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