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ニッポンの裁判

ニッポンの裁判』瀬木 比呂志(著), 講談社現代新書, 2015年1月


最近は行政の体たらくさをよく見聞きする。だから、司法・裁判制度が危機的状況にあると本書で読んで聞いてもあまり驚かない。結局のところ、司法制度のみならず、日本という国そのものが、未だに中世から脱していないのではないかとの思いを強く抱いてしまった。みな、お上頼みで、固定された社会制度の改変は叶わず、さりとて、変える気もなく、不満だけが内側に向かって鬱積されていく。

司法制度が危機的な状況にあることは、外部の人間には見えにくい。審理の経緯が『判例時報』などにて紹介されていることは知っているけれども、裁判の内容、経緯等を詳細に内容を理解して十分に咀嚼しつつ批判的に記事を書く事の出来るのは、法律や事件背景知識によほど精通している人に限られる。関係者や内部の人間を置いてはまず、不可能である。瀬木氏はジャーナリズムによる批判活動が非常に乏しいことを批判しているけれども、司法の世界で何が発生しているか、知りたいし、興味はあるものの、あまりにも壁が高すぎる。ジャーナリズムによる批判精神を司法制度改革のために呼び込むには、それなりに組織がオープンな環境を自ら整えてもらわないことには無理というものだ。

元裁判官の瀬木氏による前著『絶望の裁判所』と本書『ニッポンの裁判』は元裁判官による現状の問題点を批判的に論じた一般向けの書として稀有な内容である(『絶望の裁判所』はまだ未読)。当人らの間では常識的な内容であったとしても、外部からは伺い知ることの出来ない機微に触れる内容が多く、内情を知る者にしか書けない。最高裁判所の人事を牛耳る事務総局に逆らうと復讐人事が待っているという状況下にあっては、情報は外部に漏れようが無い。

司法制度改革により裁判員制度が始まったけれども、綻びが目立つ。裁判の内容についての知りえた情報を外部に漏らさないことを罰則付きで規定するのは、メリットよりもデメリットが多い。裁判員制度に参加した方は、自分の知りえた経験を、周囲の人に知らしめるジャーナリスティック的な役割こそ、期待すべきである。裁判で知りえた情報を外部に漏らしてはいけないなどと、あまりにも広義に制約を設けてしまうと、折角の機会をみすみす放棄しているようなものだ。裁判員制度の目的の一つに、ジャーナリズム効果、広報効果を積極的に織り込むべきなのである。さもなくば、司法・裁判制度の問題点を、どうやって一般人が知りえようか?瀬木氏は裁判官を辞めたから本書が書けたのであって、瀬木氏が裁判官を辞めてしまった今となっては、内部の事情は、次にいつ得られるか、全く定かではない。

裁判をコントロールする最高裁判所の事務総局。そもそも事務総局が最高裁判所の人事や方針を牛耳るために存在するというのは法律に基づくものなのだろうか。官僚制度の色濃い世界なのであろう。

三審制、和解の多い裁判制度といったものが、日本に固有なものだと本書で理解する。これまで私は地裁よりも高等裁判所の判断がより真実に近いものだと単純に考えていたが、この本を読んでそれが当てはまらないことが多いと理解した。裁判官も人間。当たり前のことながら、それが一般人にはなかなか理解が及ばないものだ。

代理監獄制度の弊害はずいぶん前から指摘されているのに、一向にあたらめる気は無い。袴田事件や、鈴木宗男氏との関係のあった関係で(もちろん裁判ではそれは理由ではなく、もっともらしい理由をでっちあげて)投獄された佐藤優氏。日本の裁判制度が中世のそれでなくて、何なのだろう。

瀬木氏は司法制度の改革はそれほど難しいものではないと説いているのだが、その楽観的な見方は、司法制度を担う裁判官ひとりひとりは基本的には善良だとの意識から来ているのだろう。最高裁判所の事務総局の意向を変えられるのは、政治、政府である。まずは現状をよく知ることが重要であり、瀬木氏に引き続いて勇気ある内部告発を続ける者が続くことを期待する。




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Kiankou Book Reviews
瀬木 比呂志の著作:

『絶望の裁判所』2014年2月
『ニッポンの裁判』2015年1月
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