FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

村 百姓たちの近世

村 百姓たちの近世 〈シリーズ 日本近世史 2〉』 水本 邦彦 (著) , 岩波新書, 2015年2月


私は学生時代歴史の勉強が好きになれなかった。言い訳に聞こえるかもしれないが、特に中世の戦国時代から近世に至る過程は支配者の歴史であって、そこに暮らしていた人々の暮らしや顔が見えてこなかったからである。絶え間ない戦、戦に借り出される農民。荘園の主や大名達に一方的に奉仕し、「生かさず、殺さず」に搾取され続ける農民の像がどうしても脳裏から離れなかった。今から考えてみれば、本著者水本氏があとがきで触れているように、これはマルクス主義的な歴史観に基づく支配・被支配のイデオロギーから来る解釈が広まっていたからであると思われる。

豊臣秀吉と村の成立
私には中学生の娘がいる。先日丁度太閤検地から江戸の初めが期末試験の範囲であったようで、私も一緒に勉強した。そして、試験には一夜漬けで勉強した内容がばっちりと出題された。

問:豊臣秀吉は刀狩は何のために行ったのか、書きなさい。

豊臣秀吉の出世物語など私は端から興味は無い。乱世時代の将軍から人生訓を読み取る習慣も私は持ち合わせていない。しかし、この刀狩の意義を説明した中学校の教科書の記述には私は少し意外に思った。ちなみに、答えは以下の通り。

答:農民の武器による反乱を防止し、農業に専心させるため。

上から目線ではあるけれど、農民を農業に専心させ、乱世に終止符を打つための重要な施策であったことが分かる。

そして、豊臣秀吉が行ったもう一つの大きな仕事、太閤検地は、村の成立に重要な役割を担っていたことが本書を読むとよく理解できた。

国富は「石高」として換算され、村単位での課税となる。人々が村に属することにより、従来までの中世的な荘園的な関係を一掃し、公儀領主 vs. 百姓(村)という図式に置き換えていったのだった。「村」を成立させた功績こそ、豊臣秀吉は評価されるべきだ。

様々に残された歴史資料からは、大小の紛争のいざこざや、様々な活動の様子を伺い知ることができる。村には村の掟があり、その中でほとんの事は自治的に済まされていた一方で、公儀領主が扱うべき内容と明確な区分がある。

鉄火と調停
本書でいかにも日本的だと思ったのは公儀領主による鉄火調停というものだ。揉め事があったときに両者が焼けた鉄を素手でつかみ、その焼け爛れ方をみて占いで裁判するというもの。大変な大怪我に至るので、実際にはその過程で調停に至って解決されることを目的としているとのことである。

先日読んだ『ニッポンの裁判』瀬木 比呂志(著), 講談社現代新書, 2015年1月によると、現在行われている裁判では、ほとんどの裁判官は調停を好む、ということであった。原告としては、白黒をはっきりさせたいから裁判を起こしているのであって、調停でグレーな結末を望んでいるとは私は思わない。思うに、現代の裁判官は、この鉄火調停への憧れがあるのではなかろうか。「喧嘩両成敗」とか、「三方よし」もたしかにひとつの良識ではあるけれども、白いものをはっきり白と言う明晰性が現代の裁判官には求められる場合が多々ある。訴訟の数自体が最近は減少傾向にあり、停滞感が漂っているのは、裁判を起こしても満足な解決に至っていないからではなかろうか。近世以来、裁判制度は問題をひきずっている。

村の変遷
村の形態は時代とともに変遷する。第三章で18世紀は複数年の年季奉公人がほとんどであったのだが、19世紀にかけて、一年以内の季節奉公や日雇いの形態が増えたと書いてある。これは非常に興味深い。なぜ、長い奉公をしなくなったのか。

以下は私の私見である。社会がすこしずつリッチになり、余裕ができるようになると、精神的にも少し余裕が出来る。同じ勤め先に長く勤めるのはストレスである。つまり現代社会で起こっていることが、実は江戸時代にもすでにその原型があったのではないだろうか。

自給自足?
安藤広重の東海道五十三次の絵を見ても、禿山に数本の松の木がひょろっと生えているだけの構図が散見される。山地は草本化され、干鰯を買い求めたとのことなのだが、そうなると、江戸時代が自給自足社会であったとのイメージとずいぶん相反する。

当時の農業の欠点は、肥料を多数必要としたことである。また米の裏作に麦を作るのも土地を痩せさせる要因ではなかったか。最近は冬期湛水を研究されている方もいる。自給自足を目指した循環型の農法は、今なお大きな課題である。




---
Kiankou books review シリーズ日本近世史

『戦国乱世から太平の世へ <シリーズ 日本近世史 1>』藤井 譲治(著), 岩波新書, 2015年1月
『村 百姓たちの近世 <シリーズ 日本近世史 2>』 水本 邦彦(著) , 岩波新書, 2015年2月
『天下泰平の時代 <シリーズ 日本近世史 3>』高埜 利彦(著), 岩波新書, 2015年3月
『都市 江戸に生きる <シリーズ 日本近世史 4>』吉田 伸行(著), 岩波新書, 2015年4月
『幕末から維新へ シリーズ日本近世史<5>』藤田 覚, 岩波新書, 2015年5月
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

Profile

Kiankou

Author:Kiankou
新書・新刊・社会科学・自然科学・経済・青春小説・エッセイ・思想・教育・児童・絵本・書籍の読書感想、書評、レビュー。
新書入門、文庫入門で何を読もうかと迷っていらっしゃる方にも、ご参考になれば幸いです。profile


いろいろなおすすめリスト

週間人気ページランキング


Twitterボタン

Latest journals
Search form
Latest comments
Latest trackbacks
Monthly archive
Category
Link
twitter
Display RSS link.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。