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それでも金融はすばらしい

それでも金融はすばらしい 人類最強の発明で世界の難問を解く。』ロバート・J.シラー(著), 東洋経済新報社, 2014年1月


2007年以降、金融危機に直面したアメリカでは金融業界に対する風当たりが強い。トップ1%の年収を持つ階層の人間を税金を使って救済することの妥当性についても、いまだ社会から完全な納得が得られているとは言いがたい。金融危機がそれに携わる人の道徳的な弱さ、脆さに起因するのであれば、制限を強化する方向にて対応すべしというのが妥当な道筋であろう。

ところが、本書ロバート・J.シラー氏は、金融危機を発生させた原因は金融システムが今だ発展途上であったことが原因なのであり、金融そのものは人類にとってかけがえの無いシステムであるとして、その存在そのものを強く肯定する。ともすると金融そのものが否定されかねない状況を危惧する。規制の強化による権限縮小ではなく、より英知を結集することにより不完全さを克服できると非常に楽観的な見通しを示している。本書は金融業にこれから携わろうとする者にとっては力強い精神的な支柱となるはずだ。

ロバート・J.シラー氏がその方向性として強く求めているのは、「金融の民主化」である。株公開のプロセスや複雑なデリバティブは、それに携わらない者にとっては複雑怪奇で理解不能である。投資をする際に必要な情報がしっかりと明示されている仕組みを作るためには、英知が必要だとロバート・J.シラー氏は強調する。

ほんとうに、英知は金融の欠点を克服することが出来るのだろうか。どんなに完璧なシステムであっても、それを造り出すのは人間である。抜け穴や、意図した作為的な誤謬を含んでしまう可能性はゼロには出来ない。あまりにも楽観的なこの著者の見通しには少々白けてしまう。ともあれ、長い目でみれば、金融の民主化が人々に齎す利益は否定しようがない。

たとえば日本の例で言えば、日本版401K(確定拠出年金)により退職金の運用プロセスに自らが参加できるようになったし、株式の取引単位の7割は100株単位の小口になっているとのことだし、成果はいまひとつだがNISAが立ち上がった。議論のあるところだがFXに参加する者も増えている。富の分配とまではいかないが、制度の民主化により恩恵を齎しているのは事実だろう。株価の上昇そのものではなく、制度の民主化が利益をもたらしていることに注意したい。

本書は主にアメリカ市場を対象として書かれていることが原因で何点か違和感を感じた点がある。一つは本書第12章で取り上げられている「規制当局」である。

「政府規制当局を取り仕切る「官僚」たちは、世間からはほとんと評価されない」(page 201)

アメリカとは異なり、日本では官僚が大きな権力を握っている。しかも、日本の規制当局は、他の人に評価されようが、されまいが、それは彼らの行動を拘束するものではない。日本の官僚は省益および自らの権益の拡大を至上命題と捉えている。

本書が日本市場と異なる点のもう一つは、慈善家に対する期待値である。アメリカではトップ1%の収入がそれ以下の階層に比べて段違いに大きいこととも関連する。


人間はもともとアニマル・スピリツを持つものであって、「攻撃性と権力欲のはけ口」を与えてくれるようなシステムが必要だとロバート・J.シラー氏が本書を結んでいる。人間のワイルド性を否定せずに大きく肯定しているところが力強い。




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Kiankou Books Review

エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10(日本経済新聞,2014年12月29日掲載)

1.『労働時間の経済分析 超高齢社会の働き方を展望する』山本勲/黒田祥子
2.『ミクロ経済学の力』神取道宏
3.『量的・質的金融緩和 政策の効果とリスクを検証する』岩田一政
4.『それでも金融はすばらしい 人類最強の発明で世界の難問を解く』ロバート・J.シラー
5.『サービス産業の生産性分析 ミクロデータによる実証』森川正之
6.『地方消滅 ー 東京一極集中が招く人口急減』増田寛也
7.『なぜ貧しい国はなくならないのか 正しい開発戦略を考える』大塚 啓二郎
8.『コーポレート・ガバナンス』花崎正晴
9.『アダム・スミスとその時代』ニコラス・フィリップソン
10.『その問題、経済学で解決できます』ウリ・ニーズィー、ジョン・A・リスト
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