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入門犯罪心理学

入門 犯罪心理学』原田 隆之(著), ちくま新書, 2015年3月


付属池田小事件や秋葉原通り魔事件などの凶悪事件があるとマスコミはこぞって社会的背景を追うのが慣わしである。人々は理解を超える状況の手がかりをつかもうとワイドショーのコメンテーターを注視する。そこに似非科学的な根拠に基づく判断が忍び込む余地が生まれる。原田氏は犯罪に対して根拠に基づく判断と対処、治療を推奨する。古色蒼然とした日本の司法・警察システムでは依然として古い価値観・認知が跋扈しており、犯罪心理学の新しい流れがなかなか流れ込まないように思われる。

美和大和氏の著作を読むと、犯罪者治療悲観論"Nothing works"が胸に迫ってくる。「サイコパス」と呼ばれる冷徹な悪魔のような殺人鬼は、果たして治療可能なのだろうか。意識や認知のほとんどは脳の機能と密接についていることは最近の脳科学の成果からわかりつつあるのであるから、そういった研究が「治療」に結びつくことを期待するしかない。人間が正常であることが分かるのは、異常者との対比でしかない。異常者はそういった意味では人間のしくみ、人間の心や精神、認知とは何かを知る上で、長い意味では社会に貢献していると言えなくも無い。

犯罪を犯した者はどう対処されるべきか。刑法を取り扱う書物では犯罪に対する報復としての刑罰の妥当性が主に論じられる。再販防止や治療については、「それを行うことが望ましい」との記述があるものの、たいがいの場合、現実的には難しい、という記述に止まってるのではないだろうか。犯罪に対する処遇の目的を再犯防止に置くのか、応報に置くのか。これは哲学の領域である。

本書では治療の可能性、実践の成果が語られており、非常に興味深い。再犯防止のための治療の可能性について実践の成果を交えて本書では報告されている。犯罪者を「さん」づけで呼ぶというのはひとつの人格として尊重することの象徴的意味を持つ。池波正太郎の『鬼平犯科帳』では長谷川平蔵が捕らえた盗賊を自分の子分にする際には、長官の長谷川平蔵はその元盗賊を全幅の信頼を寄せていた。人と人とのつながりに信頼を置くというのは池波正太郎のフィクションではあったが、「治療」というのはそもそも信頼をおかずにはできるものではない。

「治療」が適応可能な刑罰は、薬物や、性犯罪に限られるであろうが、新しい実践による可能性には期待する。


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Kiankou

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