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「タレント」の時代

「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論』酒井 崇男(著), 講談社現代新書, 2015年2月


酒井氏によると最近の経営学は古い社会環境を前提にしているので役に立たないということであるが、ドラッカーが「絶え間ないイノベーションが企業生存の鍵を握っている」と述べていた事については私は正しい指摘であったと思っている。旧電電4社がNTTと一緒に討ち死にしたのはグローバルに展開するファブレス企業の戦略を甘く見て、その時流を無視したからである。旧電電4社も「ガラケー」という狭い世界の中においては精一杯「イノベーション」していたのであろうが、世界の時流に背を向ける戦略は正しくなかった。日本は自らの高度な技術に自己陶酔する余り、新しいパラダイムを受け容れることが出来なかった。

イノベーションが重要であることは経営学では繰り返し強調されており、プロダクトマネージャーが重要なポジションであることは外資系の企業では常識となっている。私はいくつかの外資系企業を渡り歩いて現在に至っているが、プロダクトマネージャーは本来的には最も優秀な人材が担うべきポジションということは半ば暗黙の了承事項である点で、酒井氏の意見には賛成する。ただし、外資系企業といえど、プロダクトマーケティングが本来の力を発揮できず、上と下からのプレッシャーの板ばさみに遭って不満を一手に引き受ける窓口となってしまった某外資系企業も私は観てきている。企業は一人では動かない。プロダクトマーケティングとは別の所属長がいて、そちらが実質的な権限を有しておりプロダクトマーケティングに少量の権限しか委譲しない場合には失敗する。伝統的な日本企業が形だけのプロダクトマーケティング制度を導入するとそうなりかねない予感がする。

トヨタは大規模なリコールがあったにも関わらず業績は大崩れしていない。本書を読みながら感じたのは、日本にとって一番身近なトヨタについてもう一度学ぶべき点が多いということである。酒井氏が本書で指摘しているが、「OJTショリューションズ」の「片付け」の本は以前読んで、非常に面白かった。


イノベーションが重要であることは経営学では繰り返し教えるが、それを生みだす方法を経営学は提供しない。「タレント」こそが重要であるとの論旨が本書のキモである。優れたタレントはそれではどのようにしたら育てることができるのだろう。

酒井氏はタレントの秘密は「創造性」と「非定型性」を目的的に組み合わせる事だと指摘している(154ページ)。一見無関係な2つを結びつける視点と能力である。この能力はもちろん天性のものでgivenであるけれども、それを活かすには、トレーニングが必要だ。「タレント」の原石を内側に持っているだけでは活かされない。この点について本書はもう少し触れるべきであった。

奇しくも、私は先日『AIの衝撃』という本を読んだばかりであるが、全く同じことが指摘されていた。人間は突拍子も無いことをいきなり思いつく訳ではなく、それまでの経験が熟成され、出現する。

これは現在の日本の教育に欠ける視点であるため、一朝一夕にはこの潮流は変えることはできないであろう。だが、私はひとつのヒントになる方法を知っている。それは、たまたま私の娘に習わせた絵画教室である。そこでは2つの事象を提示され、それを結びつける「絵」を描かせる。考える時間を与えず、その場で思い浮かんだものを形にする。こうして何度も訓練していくうちに、突拍子も無い2つ以上の「もの」を頭の中で瞬時に結び付けられるようになるのである。私はたまたまこれを幼児用の絵画教室として知ったのであるが、これは実は頭の固い30 - 40代以上の課長職(候補)の人間こそ相応しいトレーニングであると確信している。

単なるトレーニングひとつで劇的に変化があるとは私にも思わないが、人間、欠けているものがあるのなら、学習して修正し、新しい「現実」に備える意思さえあれば、なんとかなる。「タレント」が天性として備わっている人間はもちろん、「タレント」能力が劣る者であっても、努力により克服できる。努力する才に長けた人のことを天才というのだ、という人もある。



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