FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

福島原発、裁かれないでいいのか

福島原発、裁かれないでいいのか』古川 元晴,船山 泰範(著), 朝日新書, 2015年2月


先日瀬木 比呂志氏による『絶望の裁判所』2014年2月, 『ニッポンの裁判』2015年1月の2冊を読了したことがきっかけとなり、私の内部では裁判制度・司法制度に対して非常に批判的なものの見方を持つようになっている。この本は偶然目に留まった本であるが、期せずして、日本の裁判制度・司法制度全般に対する疑問がさらに深まる結果となってしまった。

原発事故が人災であることは明らかである。この本でも指摘されているが、2011年以降多数のマスコミ等が指摘している通りだ。それにもかかわらず、当たり前の判決を現在の裁判所が下すことができないでいる。これでは現在の司法・裁判制度に大いなる陥穽が存在するといわざるを得ない。

「原子力ムラ」という言い方をよく耳にする。目的を共にする産官学の一体となった社会集団が、自分たちに都合の悪い考え方を人為的に排除し、国民を欺き続けてきたと言われても、反論できないはずだ。

司法が政治や官僚に迎合し、裁く事ができないとすると、いったい、何のための司法制度なのか、ということになる。

司法制度に少々の不備があるのはこの際目をつぶろう。しかし、あの福島の原発事故を裁けないのはまずい。国際社会から笑いものになることは必至だ。

本書では、「具体的予見可能性説」と「危惧感説」を対比させて現在の司法が「具体的予見可能性説」に傾く現状を紹介してこれが司法が福島原発事故を裁けない理由として挙げているが、問題の根本はそのような表面的な学説論争ではなく、そもそも、司法がまったく現状を見ようとしていないからではないかと私は見ている。前例踏襲主義。司法のやる気なし。

その意味では2014年5月21日の福井地裁の大飯原発差し止め判決は、「生存を基礎とする人格権」を高らかに謳うこの判決は画期的であるように見える。踏み込んだ判決、画期的な判決は地裁が主に出すものだという話が『絶望の裁判所』に書いてあった通りである。
ただし、この判決文は素人の私から見てもあまりにもドンブリ勘定で大雑把な判決だ。

「コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」

人命第一、人格権が上位に位置すべき点は確かに一般の理解は得られやすいが、その反面、原発により得られる利益を全く蔑ろにする判決は、バランスを欠いたものとの批判を浴びることだろう。例えば、「原発」を「自動車」と置き換えてみればよい。自動車事故では毎年国内で4000人を超える人が亡くなっている。しかし、自動車を廃止すべしとの論が合意を得た試しはない。自動車を利用する経済活動による利益が勘案されるからである。
私は原発推進派とも反対派とも違う。すでに存在する原発をもっと直視し、リスクと利益をバランスさせて論じるべきだと言っているだけである。

この点を論ぜず、「危惧感説」の重要性を論じる当著書の両氏、古川 元晴・船山 泰範氏の判断基準にも少々疑問を感じる。「危惧感説」自体が悪いというのではい。


福知山線の脱線事故を誘発した原因のひとつが、非科学的な「日勤教育」にあることは様々な証言等から明らかである。事故直後のインタビューで、管理者が運転士を非難しており、「日勤教育が欠けていたからだ」と証言したというのを新聞で読んだ覚えがある。懲罰的な「日勤教育」を避けようと追い詰められた運転士が無謀な速度でカーブに突っ込んだというのが実情であろう。取締役以下の関係者がこれらの「日勤教育」が安全性に多大な問題を引き起こす可能性を理解できなかったとすれば、明らかな安全管理義務違反である。スピードアップを目的としてカーブを急な傾斜にしたとの理由で訴えるのではなく、「日勤教育」が引き起こした問題点に絞るべきでははなったのか。

スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

Profile

Kiankou

Author:Kiankou
新書・新刊・社会科学・自然科学・経済・青春小説・エッセイ・思想・教育・児童・絵本・書籍の読書感想、書評、レビュー。
新書入門、文庫入門で何を読もうかと迷っていらっしゃる方にも、ご参考になれば幸いです。profile


いろいろなおすすめリスト

週間人気ページランキング


Twitterボタン

Latest journals
Search form
Latest comments
Latest trackbacks
Monthly archive
Category
Link
twitter
Display RSS link.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。