FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ヴェニスの商人の資本論

ヴェニスの商人の資本論』岩井 克人(著), ちくま学芸文庫, 1992年6月

標題のエッセイはなかなか洒落たヴェニスの商人論である。一般的にはアントーニオの世界(キリスト教的世界)とシャイロックの住むユダヤ教的世界は2つの対比された世界として解題されるのが常であるように思われる。すなわち、

アントーニオ      ←→    シャイロック
キリスト教的世界  ←→    ユダヤ教的世界
同胞的つながり   ←→    契約を通してのみのつながり

との対比があり、従来的は解釈ではアントーニオのキリスト教的世界がユダヤ教に「勝利」した物語、としてヴェニスの商人を読み解く。ところが、岩井克人氏によると、人肉裁判においては「共同体的社会」による温情に依存したシステムは完全に敗北する。

シャイロックが「契約によって」という言葉に従って、アントーニオの肉を1ポンド切り裂こうとした途端、「血を流してよいては書いていない」と契約を逆手に取ってシャイロックを追い詰める。つまり、アントーニオが勝利したのは契約に基づく世界観=ユダヤ教的な世界観であったというのである。シャイロックの娘はアントーニオの友人と駆け落ちし、この結果シャイロックはキリスト教世界に完全に屈服する。アントーニオ、シャイロックはともにこの物語により変化を生ぜしめる。

以上はもちろん岩井克人氏が描き出した架空の世界観であるけれども、2つの世界がこの物語によって接近し、不可逆的に変化したとの読み方は非常に斬新である。

美貌と才能の持ち主のポーシャに貨幣論を絡めて論じる件が面白い。ポーシャがここで始めて開花する。貨幣は持っているだけでは価値が無く、流通して初めて意味をなすとの論はアダム・スミスの論に通じる。ポーシャに限らず人間の価値は貨幣の流通に例えられるであろう。どこでその価値を発揮するか。人がその価値を発揮するのは、世界と接するときである。




スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

Profile

Kiankou

Author:Kiankou
新書・新刊・社会科学・自然科学・経済・青春小説・エッセイ・思想・教育・児童・絵本・書籍の読書感想、書評、レビュー。
新書入門、文庫入門で何を読もうかと迷っていらっしゃる方にも、ご参考になれば幸いです。profile


いろいろなおすすめリスト

週間人気ページランキング


Twitterボタン

Latest journals
Search form
Latest comments
Latest trackbacks
Monthly archive
Category
Link
twitter
Display RSS link.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。