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明治維新

明治維新 日本の歴史 16 集英社版』中村 哲(著), 集英社, 1992年9月

明治維新の残した課題
明治維新は日本の大きな分岐点だった。政治・経済・社会・文化の面で江戸時代から続く伝統を残しつつ、自己を大きく変革する必要性に迫られていた。第二次世界大戦に連なる日本がその後歩んだ軍国主義の誤りの起源をこの時期の日本に私は捜し求めている。さらに今日に及んでもなお明治維新が遣り残した課題が日本には残されている。

薩長主導による新政府の立ち上げから全国統一までに至る数年間がその後の日本に及ぼした影響は計り知れない。各地に発生した草莽隊は日本を変革すべく結成されたエネルギーの塊であったし、自然発生的に各地に波及した世直し一揆は庶民レベルでの抵抗の表明であった。新政府はこれらのエネルギーを認めつつも、自らの影響力を最大化することに専心するあまり、草莽や民衆の意とは異なる方向へ日本を導いていってしまったようだ。

岩倉具視が提言した神武創業を新政府の理念とする考え方は、岩倉の意図を超えてその後の日本のあり方を大きく規定してしまった。

「「神武」は神話上の初代天皇であり。古代天皇制は専制政治体制であり、民主制でも共和制でもない。この点は、たんなる理念の問題にとどまらず、創出する政治体制の内容を規定することになっていく.. (page 55)。」

私が少々残念に思うのは西洋の事情を書物から多くを学んでいた(はずの)福沢諭吉らのグループが、なぜ異を唱えなかったかである。学問至上の考え方は本書によると「国に尽くすことよりも」重要だとの考えが江戸時代に普及していたはずである(page 127)。学問ないしは知識が現実の社会に生かされなかったのは、現実の政治ないしは軍事を牛耳る「行動」が書物の上の知識に勝っていたことを示している。どうしてそのようになってしまったかを見極めることが非常に重要だ。そうでない限り、歴史を学ぶ意味なとないと言ってよい。

出身藩による派閥争いが熾烈を極め、これが大きな問題点であった。田中彰氏は岩倉隊がこの重要な時期に海外に遠征した理由を、「派閥の対立が統一国家をめざす重大な時期に不測の事態をひきおこそことをもっとも恐れていた(『明治維新』田中彰, page 256)」と記述している。倒幕は日本に混乱を招き、プチ戦国時代状態となっていたところに、薩長のプラグマティック的、ないしはマキャベリズム的な現実主義が跋扈してしまったのである。公儀による民主的な政治体制も、府県の実情を踏まえた地方行政の力も奪ってしまったこの時期の政府の責任は重い。

版籍奉還から廃藩置県はいずれも徳川幕府体制から専制政治体制への移行を遂行するために必要な措置であったけれども、その目的が一部の藩出身者の利益に偏っていたことは遺憾である。


江藤新平の司法改革

不平等条約解消のため、日本が西洋に模して進めた司法改革は表皮的な模倣に止まっており、江戸時代以来続いていた伝統が消滅してしまったのは非常に残念である。というのは、私が見るに、日本の司法制度は明治期に規定された理念・制度が今日においても深く影響を受けているからである。

本書によると江戸時代には民事の揉め事は郷里単位で行われ、名主や年寄りなどのその地方の名士たちが仲介に入り、示談を取りまとめていたたとのことである。これは日本が独自に編み出した民事解決の手段であり、揉め事をまとめるための知恵であったはずだ。

しかるに、西洋的な「弁護士法」を政府が担いてしまった結果、その地方の背景を心得ない代理人が免許制度に基づいて取り仕切ることになると、民衆にとっては弁護士が遠い存在になってしまった、とのことである(page 119)。

この司法制度改革であるが、これは明治の時代で完結した話ではないのである。刑事についてではるが、裁判員制度が導入される一方、司法試験改革が遂行されているのであるが、これらの改革についても、実は、民衆のための改革とは程遠い意図が込められているのである(→『絶望の裁判所』瀬木 比呂志(著), 講談社現代新書, 2014年2月)。現在の日本の司法制度の問題の根源は明治期の司法改革にある。

ちなみに、現在の裁判では裁判官が示談を勧めるケースが最も多いとのことである(『絶望の裁判所』)。これは江戸時代以来の日本の伝統の回帰だと見ることもできるけれども、そもそも、西洋的な司法制度の理念が日本に根付いていないことを端的に示しているとも言える。





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Kiankou書評 ご参考リンク

島崎 藤村『夜明け前 第一部 上』新潮文庫, 1954年12月
『明治維新 日本の歴史 16 集英社版』中村 哲(著), 集英社, 1992年9月
『明治維新』田中 彰(著), 講談社学術文庫, 2003年2月
渡辺 京二『逝きし世の面影』平凡社ライブラリー, 2005年9月
『開国と幕末変革 日本の歴史18』井上 勝生, 講談社学術文庫, 2009年12月
福沢 諭吉, 伊藤 正雄(訳)『現代語訳 文明論之概略』慶応義塾大学出版会, 2010年9月
犬塚 孝明『海国日本の明治維新 異国船をめぐる100年の攻防』新人物往来社, 2011年6月
加藤 祐三『幕末外交と開国』講談社学術文庫, 2012年9月


『幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1』井上 勝生, 岩波新書, 2006年11月
岩波新書編集部『日本の近現代史をどう見るか シリーズ日本近現代史 10』岩波新書, 2010年2月
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