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静かな大地

静かな大地 松浦武四郎とアイヌ民族』花崎 皋平(著), 岩波現代文庫, 2008年2月

幕末期に北海道地区の調査を実施した松浦武四郎の軌跡を本書が追う。私にとってのアイヌの物語りの出発点は「クナシリ・メナシの戦い(1789年)」を描いた『蝦夷地別件』船戸与一著である。本書を読んで船戸与一氏の著作がかなり綿密に史実を踏まえて描いていたことをあらためて確認した。飛騨屋の悪行、利権をめぐる松前藩の動き。ロシアに対抗する意図がありながら、有効な政策を打ち出せなかった田沼意次。1666年のシャクシャインの戦いは『蝦夷地別件』の中でも伝説のヒーローとして何度も触れられていたが、これに先立つ1457年にコシャマインの戦いがあった史実は本書で初めて知った。和解と見せかけて敵の主要人物を殺害する卑怯な手口は何度も繰り返されてきたのだった。私には『蝦夷地別件』の終章でアイヌの民族と文化が事実上これを期に消滅してしまった獏とした空しさが印象的だったのだが、史実もこれを裏付けている。悲しいことだが、日本人の500年間変わらない狭小な民族観をここに凝視せざるを得ない。「土人法 - 北海道旧土人保護法」の呼称が改正されたのはほんの1997年のことに過ぎない。

松浦武四郎氏の遺した仕事は文化人類学や民族学のフィールドワークに類するものが中心であったようだ。時は幕末から明治初頭にかけて。「クナシリ・メナシの戦い」からすでに60年以上も経過した後の調査であることを考えると、すでにアイヌの民族・文化は雨散霧消した後であった。

松浦武四郎氏の仕事に批判を向けたくなる気もするが、それは現在の視点から遡って歴史を照らそうとするからである。批判があって当然だ。悪い歴史は繰り返してはいけない。いかに今後に生かせるか。それが我々に残された課題だ。




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Kiankou books review ご参考リンク

『幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1』井上 勝生(著),岩波新書, 2006年11月
『開国と幕末変革 日本の歴史18』井上 勝生, 講談社学術文庫, 2009年12月
『日本の近現代史をどう見るか〈シリーズ 日本近現代史 10〉』岩波新書編集部,岩波新書,2010年2月

『蝦夷地別件』船戸与一(著)
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Kiankou

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