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落日の宴

落日の宴 勘定奉行川路聖謨 下 新装版』吉村 昭(著), 講談社文庫, 2014年6月


ロシアから通商を求めて訪れたプチャーチンの交渉役となった勘定奉行川路聖謨の物語。息着く間もなく、難題が日本と川路にふりかかる。フランスの船が来るとの知らせにロシアに動揺が走る。猫の目のように刻一刻と変化する情勢。通信手段の限られた当時は情報を把握するだけでも大変だっただろう。川路は前線にて対応したけれども、阿部正弘以下政府は結束して対応できたことが幸いした。斉昭の思想も発言も確かに過激であったけれども、川路は斉昭に理解を示し、斉昭も川路を深く信頼していたと吉村昭氏は解している。近代史的には斉昭を異端視する解釈が多いように思われるが、この吉村昭氏の解釈は腑に落ちる。斉昭は日本を守る立場を代表して発言していたのであり、阿部や川路らが現実の対応をするにあたって、ひとつの防波堤の役割を果たしたと解釈できる。

いったん締結した条約の内容を変更して、領事館を置く取り決めを破棄して欲しいとプチャーチンに迫る川路に、プチャーチンはこれに応えて川路を助ける。この場面がこの小説た。

採る事の手段が非常に限られる中で、川路や岩瀬といった幕吏は本当に優秀であったと感嘆する。外国にとってみれば武力でいきなり日本を潰すことも当初から念頭にあったことだろう。それをさせなかったのは、ひとえに、彼らの人間性、肝力だ。

法律という概念が整備されていなかった当初は、外国人との接触は非常に危険だった。鎖国は日本を護る制度として有効だったから江戸時代は260年もつづいたのだ。文化の違いから軋轢を生じさせ、日本を攻撃する理由を相手に与える危険を回避しつつ、新しい現実に対処していったのである。

惜しむらくは、日本に最初に接したハリスらがもう少し紳士的であったならば、日本のその後の国づくりはもっと違った形になっていただろうということである。暴力で開国させ、先進国が利益を貪るといった時代遅れのヘゲモニーを日本はその後忠実にコピーすることになる。

井伊直弼が独断で日米修好通商条約を締結したことに対しても吉村昭氏は理解を示している。こういった人物がいないと歴史が前に進まないこともありうる。

歴史の流れは教科書を読んでいるだけでは分からないことが多い。今回吉村昭氏の小説を読むには初めてだが、史実を忠実に踏まえており、非常に信頼感を持って読むことができた。別の作品も是非読んでみたい。



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Kiankou books review ご参考リンク

『幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1』井上 勝生(著), 岩波新書, 2006年11月
『開国と幕末変革 日本の歴史18』井上 勝生(著), 講談社学術文庫, 2009年12月
『日本の近現代史をどう見るか〈シリーズ 日本近現代史 10〉』岩波新書編集部,岩波新書,2010年2月

『落日の宴 勘定奉行川路聖謨 上 新装版』吉村 昭(著), 講談社文庫, 2014年6月
『落日の宴 勘定奉行川路聖謨 下 新装版』吉村 昭(著), 講談社文庫, 2014年6月
『赤い人』吉村 昭(著), 講談社文庫, 2012年4月
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