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多数決を疑う

多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』坂井 豊貴, 岩波新書, 2015年4月


一見すると多数決は民主的な政策選定手段であるように見える。ところが、多数決は思った以上に欠点の多い選択手段である。選挙の折りなどに、誰もが薄々とは感じているのであるが、これをきちんと言葉と理屈で説明するのは難しい。本書はよりよい政策選択手段を採るための「社会的選択理論」の入門書である。難しい数式を使わずに理解出来るよう工夫してくれているのが有難い(もっとも、本書をすべて理解したわけではない)。

少々乱暴かもしれないが、本書のひとつの結論らしき部分の抜粋を書いてしまうと、選択肢の1位、2位、3位...にそれぞれ等差を持たせ、投票して採点をする手段(ボルダルール)を採ることで、かなりの精度で投票者の意図が結果に反映されるとのことである。現在の多数決のルールを覆すには、まず、この理論を多くの人に認知してもらう必要があろう。私が知らかっただけかもしれないが、世間一般にこの結論部分はもっと広めて知って欲しい。

日本国憲法の条文を改正するためには各議員の3分の2の承認を得、さらに国民投票で過半数の承認が必要であるとの憲法96条の規定について、数理学的な根拠に基づき坂井豊貴氏はこれでは「やや甘い」と評価する。この指摘は重く受け止めるべきである。

上記の前提は、憲法を改正しようと意図する者が、ルソーの言うところの「一般意思」に反するような策略を弄して改変を達成しようとする者が出ない様に防止するためである。これは戦後長く民主政治が根付いている日本国にとっては意味があろう。

ところが、憲法が非民主的な体制下において作られてしまったミャンマーでは、憲法改正のために必要な議員数がことのほか多く、実質的に改変することが非常に難しい。民主化のために戦う象徴と言われるアウン・サン・スー・チー氏が今、困っているのはこの点である。現状の憲法に従う限り、改変はことのほか難しい。かといって、非合法的手段に訴えて改変した場合には合法性を担保できない...。本書の主題とはそれるが、発展途上国では別の次元での苦労がある。多数決のプロセスや基準が時の政府の意図が介在されると非常に危険だということである。非合理的な選出プロセスを排除するためにも、社会的選択理論の成果はきちんと社会に共有されるべきだ。

失礼ながら、本書のような論理学的な理論はこれまでの例でいくと講談社現代新書が扱う分野であったように思う。岩波新書でこのような本に出会うのは珍しい。これからも本書のような知的好奇心に訴える本を岩波新書はどんどん扱って欲しい。


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Kiankou

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