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ふしぎなイギリス

ふしぎなイギリス』笠原 敏彦(著), 講談社現代新書, 2015年5月

ロンドンオリンピックで示した国力

2012年のロンドンオリンピック開会式はイギリスの成熟した国力を内外に示した良い開会式だった。ロンドン郊外のうねうねとした丘を思い起こさせる田舎の風景から始まり、産業革命の明(鉄鋼業)と暗(公害:スモッグ)を描く。パーティーに憧れる夢見る少女の家庭を描きつつも、同時にテレビゲームに夢中なオタッキーな弟を登場させ、必ずしも健全とは言い難い世相をも包み隠さず世界に知らしめる。他国に誇れる部分も、暗部も、ファンタジーの世界もシェークスピアのマクベスの世界も聖俗入り乱れてすべてを包み込む度量。エリザベス女王を演出に用いるのも良かったし、走ることで真のイギリス人になることで英雄を目指した「炎のランナー」をパロディー化する。心の余裕と遊び心があって、しかも深い英知に裏づけされたものがなければこのようなものは出来ない。

日本人の従来の発想からするとオリンピックは国威高揚のための場であって...、などと、真面目に考えすぎて面白みに欠けるものになる恐れがある。だが、日本もずいぶん変わってきた。日本には日本の良さがある。2020年には日本のソフトパワーを集結して国内外に是非知らしめたいものである。

君臨すれども統治せず

先日2015年6月15日はマグナカルタが制定されてからちょうど800年に当たる日だった。「君臨すれども統治せず」で有名なイギリスであるが、日本の天皇に比べると、イギリスの現在の国王は実態政治に比較的近い場所にいる。国王のもと、現在でもイギリス連邦としての弱い統治制度が存続している。形式が実体を規定するという側面があることを考慮すると、おもった以上に影響力は強い。

一方で日本は日中戦争から第二次世界大戦にかけて天皇の統治の時代に経験した暗い戦争を反映し、日本国憲法では実体的には何も影響力を持たない存在となっている。これはイギリスと日本の歴史の違いでもあるし、一概にイギリスの制度を批判は出来ないが、世襲の一部の人間の意見が国政を左右するのは、いかがなものであろうか。イギリスは貴族院の改革には着手したけれども、さすがに国王制の改革までは踏み込んでいない。


選挙制度について

現在の選挙制度は2大政党政を中心に作られている。僅差が大差に結びつく現代の選挙制度はイギリスに限らず、これは日本でも同様に問題が発生している。先日読んだ『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』坂井 豊貴, 岩波新書, 2015年4月では、新しいルールに基づく意思決定方法についての斬新な提言がなされていた。きちんとした論理にもとづくルールがもっと理解され、広まって欲しいと願う。


しなやかな政治システム

全く方向性の異なるキャメロンとクレッグ氏が連立政権を組んだとき、何故、イギリスはうまく政権を運営できたのか。一つにはクレッグ氏の徹底したオープンポリシーが功を奏したと解説する方もいる→『イギリス 矛盾の力 進化し続ける政治経済システム』岐部 秀光, 日本経済新聞出版社, 2012年1月。イギリスは金融ビッグ・バンやサッチャー時代の労働組合への圧倒的な弾圧など大胆で思い切った改革を実施することができる。保守的なお国柄と言われながらも、やるときにはやる。そのあたりが日本と大きく異なる点である。日本は官僚が情報と強い力を持っており政治が介入できない部分が多すぎる。日本との差はそこにあるのだろう。

ユーロとEU

イギリスがユーロを採用してこなかった理由については統一貨幣を利用することの弊害があるので当然だと私は理解している。通貨を統一してしまうと、独自の金融政策を打つことが出来ない。一国がデフレであっても、通貨を増やすような政策が簡単に打てなくなる。EU地域で通貨を統一するということは、独自の財政・金融政策を放棄することに等しい。通貨や金融政策の実体が、不透明な(選挙で選ばれない)ブリュッセルの官僚に牛耳られることに抵抗しているイギリスには理解できる。

通貨はまだしもである。人の移動が地域内で基本的には自由となると、社会資本の充実した国に貧しい国から人の移動が起きるのは当然である。これでは社会資本の豊かな国が一方的に不利益を受けてしまう。ドイツは一時期トルコからの移民が大量に押しかけて問題になっていたと記憶しているが、今はどういう状況なのだろうか。


イギリスのソフトパワーを見習う

プレミアサッカーチームを作り、そこから大量の資金を生み出す。「無」から資金を生み出すイギリスの錬金術には、さすがに一日の長がある。テニス、ラグビー、ゴルフ。イギリスはソフトが金を生み出すことをよく知っている。

インターネットが始まるずっと前からイギリスはBBCラジオを通じて全世界にメッセージを送り伝えてきた。長い実績が独自の価値を作り出している。ごく最近になって、海外放送に力を入れ始めた中国国営のプロパガンダ放送とは訳が違う。

翻って、日本はどうだろうか。日本には発掘されていないソフトパワーが山ほどある。しかし、それを掘り起こしてビジネスに換えるという発想になかなか結びついていない。表現力と、実行力に欠けている。地方発の新規ビジネスへの取り組みがやっと緒に着いたばかり。それも基本的には国内向けのものが多い。海外に向かって打って出るのは敷居が高い。

イギリスはもともと海外出身の王が統治することにあまり抵抗が無いと本書にて解説されていた。日本は企業も含めて、そういった環境に慣れていない。

まずはこういった特性を見極めつつ、少しずつイギリスの良いところを見習っていきたい。




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Kiankou Books review ご参考リンク

『イギリス 矛盾の力 進化し続ける政治経済システム』岐部 秀光(著), 日本経済新聞出版社, 2012年1月
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Author:Kiankou
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