FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

世論調査とは何だろうか

世論調査とは何だろうか』岩本 裕, 岩波新書, 2015年5月


筆者はNHK週間こどもニュースでキャスターを務めた経験を持つ岩本裕氏。できるだけわかりやすく解説しようと試みる岩本氏の意図は十分達成されたと思われる。実際に世論調査を企画、実施された実務経験が生きている。民意を測り、時の政治・政策の批判・チェックに役立てるための武器としての世論調査の重要性もなるほど伝わってくる。

もっとも、本書を通読すると、世論調査の利点よりも、世論調査を通じた「世論操作」に陥りがちなメディアや政治の姿勢に不信感が増してしまった。

私はそもそも世論調査やアンケートの類については答えないことにしている。理由は、この本でも詳細に解説されているが、作成者の誘導尋問や選択肢の意図的な作成により、結果が捏造されることを恐れているからである。個人情報を開示すると、迷惑電話やメールが増えるのも困る。「NHKの~と申しますが」と電話で世論調査がかかってきたとして、本当にNHKが実施しているとどのようにチェックすればよいのか。電話による調査手法は容易である反面、現実的にはますます実施が難しくなるだろう。

国勢調査については国民の義務なので仕方なく回答している。国勢調査の質問項目は通勤の手段や年収など、これを調べて具体的にどのような政策に役立てようとしているのか、はなはだ疑問な項目が多すぎる。これに代えて、地方自治や国政の具体的な政策についてどのように思うかもっと具体的な項目を聞くべきではないだろうか。

手法や目的が全く異なるが、私は民間企業の立場から市場調査のためのアンケート調査を企画・実施・分析した経験がある。有効回答数によって誤差が決まるという統計の基本的な考え方に当初は非常に驚いた。データベースのデータをそのまま放り込むと、複雑な統計学の数式を理解していなくてもたちどころに調査結果が出力されるソフトが世の中にはたくさん出回っている。本書で世論調査と統計学に興味を持った読者に、次に読む本は何かを指南してくれていれば、さらに親切だった。


輿論の復活を目指して

岩本裕氏が紹介している『輿論と世論(よろんとせろん) 日本的民意の系譜学』佐藤 卓己, 新潮選書, 2008年9月は名著である。「世論調査」と表現したときの「世論」は、熟考された後の人々の意見というものではなく、「雰囲気」や「気分」を表す表面的なpublic sentimentsである。「輿」という字の意図的な廃止とともに、public opinionの考え方も廃れてしまったと私は考えていた。しかしながら、現代にはインターネットにより自由に意見を表明できるSNSやブログといったツールがたくさん存在する。これは我々が得た新たな武器である。世論調査のような画一的な方法では輿論を掬い取るのは難しく、また、屑情報が多いのも事実ではあるけれども、例えば、本書で紹介されている「討論型世論調査」の手法をネットに拡大し、それぞれの意見が言いっぱなしではなく、他の方の批判やコメントなどのフィードバックを受けて意見のさらなる深まりにつながれば、新しい民主主義を目指す手法として活用できる。



スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

Profile

Kiankou

Author:Kiankou
新書・新刊・社会科学・自然科学・経済・青春小説・エッセイ・思想・教育・児童・絵本・書籍の読書感想、書評、レビュー。
新書入門、文庫入門で何を読もうかと迷っていらっしゃる方にも、ご参考になれば幸いです。profile


いろいろなおすすめリスト

週間人気ページランキング


Twitterボタン

Latest journals
Search form
Latest comments
Latest trackbacks
Monthly archive
Category
Link
twitter
Display RSS link.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。