FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日本の軍隊

日本の軍隊 』飯塚 浩二, 岩波現代文庫, 2003年8月


この本は「日本の軍隊」について非常に基本的な知識が得られた点で他の本からは得られない貴重な読書体験をすることができた。この本が最初に出版されたのが1950年というから戦後5年後である。その当時は軍に対して未だ自由に論じることが憚られる雰囲気もあったのだろう。

軍に関する情報は大半が意図的に消失されてしまっている。証拠を残さない悪しき日本の慣習が、どれほど過去の悪い因習が明るみに出ることなく闇から闇に葬られてしまったことであろうか。嘆いていても仕方が無い。戦争と軍隊を経験された方の記憶から記録に書きとめて、後世に伝えること。これは非常に重要な仕事である。

軍隊学校について本書で体験された方が詳しく語っている。幼年学校から中学校、それと士官学校の予科と本科まで、一連の教育制度が整っていたこととその教育内容がどのようなものであったか良く分かった。一つのイデオロギーのもとに集まった目的を一にする集団であるから、皇国観に基づく宗教団体と言ってよいと思われる。

上官の命令は絶対で、殴られながら洗脳されていった閉じられた制度の特徴が良く分かる。そこには「人権」という考え方は皆無である。このような制度は日本に特徴的なものであったらしい。日本の中世的で専制的な社会観がそこにある。

赤坂離宮が燃えない様、人が火の粉を払う。人間より、物。人より、皇国。

先日読んだ『日本軍と日本兵 米軍報告書は語る』一ノ瀬 俊也, 講談社現代新書, 2014年1月でも、歩兵が肉弾戦で戦車に向かっていくなど、全く人命を無視した戦法が日本の得意とする戦法であったことが紹介されていた。歩兵による白兵戦による突撃などといった精神性を日本の軍隊では尊重していたが、近代兵器によって武装されたアメリカ軍の敵ではなかったことが一ノ瀬氏の報告でも明らかであった。

連隊長の点数稼ぎのための軍隊の歩行練習といった無意味な活動があったことが指摘されているのだが、今日の時代においてはもう完全に過去の遺物となったかというと、そうでもない。例えば中学校の運動会の歩行訓練や「前へ倣え」が象徴的であるし、これに類した意味の無い規範は現代にもたくさん存在する。会社やスーパーマーケットで毎朝実施される意味の無い朝礼といったものにも残っているように思われるときがある。


なお、『きけわだつみのこえ』を以前読んだ際には理解できなかったことが、本書を読むことによって大きなヒントが得られた。『きけわだつみのこえ』では特攻隊に出られた方の遺書が記されている。彼らは、日本が間違った道を歩んでいることは理解しているし、戦争に負けるであろうことも理解している。少しでも戦争を長引かせることによって、自国の愛する者のためになるのであれば、という考えから冷静に死を選択していたのである。彼らは決してファナティックではない。


特攻隊の話を書いたところで、先日亡くなってしまった今井雅之君という俳優のことを想い出した。テレビドラマにもたくさん出ていたので、ご存知の方もいらっしゃるのではないかと思う。彼は元自衛官であることから、彼の主演した"Winds of God"という特攻隊をモチーフにした劇は右寄りの戦争礼賛の内容と思われる節もあるが、決してそうではない。若くして死ななければならなかった特攻隊の悲惨さを訴える反戦観が彼独特の世界で表現されたものだった。ご冥福をお祈りする。



スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

Profile

Kiankou

Author:Kiankou
新書・新刊・社会科学・自然科学・経済・青春小説・エッセイ・思想・教育・児童・絵本・書籍の読書感想、書評、レビュー。
新書入門、文庫入門で何を読もうかと迷っていらっしゃる方にも、ご参考になれば幸いです。profile


いろいろなおすすめリスト

週間人気ページランキング


Twitterボタン

Latest journals
Search form
Latest comments
Latest trackbacks
Monthly archive
Category
Link
twitter
Display RSS link.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。