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日本の産業革命

日本の産業革命 日清・日露戦争から考える』石井 寛治, 講談社学術文庫, 2012年10月


2015年7月5日、ドイツのボンで開催されている第39回世界遺産委員会で日本政府が推薦していた23の「明治日本の産業革命遺産 - 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」の世界文化遺産の登録が決定した。

日本の世界遺産(明治日本の産業革命遺産 - 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業)

去年2014年には「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県)を世界文化遺産として登録している。これにより日本が近代化の過程で生み出したこれらの産業群が学術的な価値のあるものとして保護されることになった。

ユネスコの「世界文化遺産」は実際には観光業を後押しする道具として用いられることがもっぱらであるように思われるが、その一方で、日本の生み出した過去の歴史を肯定的に見直そうとの国内の風潮が背景にある。殖産興業と結びついた帝国主義的政策は日本の暗い過去の政策である。徒に自虐的な史観に陥ることは無いが、とはいえ、韓国など周囲の国への気配りが欠かせない。事実、今回の「明治日本の産業革命遺産」についても、強制労働を強いられたと韓国がクレームをつけたことから、登録がされない可能性もあった。
石井 寛治氏の本書を読むと、日本の産業革命の影響はまた別の形で韓国に影響を与えていたことがわかる。たとえば、日本が先行した銀行業と運輸業、そして紡績業である。先行した日本のこれらの産業が韓国に壊滅的なダメージを与え、日本の支配を決定的にしていた。日本の産業革命そのものにクレームを付けるのは筋違いとはいえ、特に韓国の方のメンタリティーをしっかりと理解すべきと感じた。

維新期に横浜で始まった絹の取引により莫大な利益を得た者がいたことを最近の読書で私は確認している。富の蓄積は、官が主体ではなく、民間主体であったことに留意すべきだ。「富国強兵」を唱えたのは政府であったけれども、政府は民間の後押しに徹していた。
産業の発展に先立って、為替や銀行等金融環境が整備されていたというのはどうやら特徴的のようだ。イギリスではどうだったのだろうか。

幕末の攘夷思想が後々まで尾を引き、外国資本の受け入れや、外国人により国内産業を発展させることについてはかなりの抵抗感があったようだ。これは形を変えて、現代の日本にも通じるところがあるようにも思われる。徳川時代の安全保障の大前提は、外交を遮断してともかく自国内のみにて閉じることであった。この副作用として、日本人は民主主義や自由主義は根付かなかった。

本書では開国後まもなく、多くの中国人が日本に商売のために日本にやって来たことが記されている。明治新政府創立まもない頃に日本に来た女性の記した『イザベラ・バードの日本紀行』イザベラ・バード(著), 時岡 敬子(訳), 講談社学術文庫, 2008年4月にも、英国人に随伴して日本にやって来た中国人のことが記されている。中国人は英語、日本語を解し、また、商売上手なので貿易に関して言えば彼らのほうが日本人よりも数段上手であったようだ。

官営富岡製糸場についても、発端は民間の外国人であったとのことだ。国が富を蓄積するのではなく、国民に富を蓄積するとの考えがあったことを記憶しておこう。

ちなみに、紡績業や織物業が盛んであったが、短い時期にこれだけ急速に発展を遂げたのは、収益をそのまま事業の拡大に投じたためであったようだ。しかし、マーケット規模についての分析に乏しく、過剰生産による値崩れが頻繁に発生していたようだ。このあたり、産業を安定的に発展させるための工夫についての配慮が足りなかったように思われる。
日清戦争の勝利のあと軍部が大量の予算をつぎ込んでいったのも、情勢についての見識が欠如していたのであろう。軍備が過剰であると判断する仕組みが無かったことが悔やまれる。

産業革命期、紡績業や鉄鋼業においては独自の機械を使用するとの発想はずいぶん後になってからのことであると本書が指摘している。技術的な革新が産業を発展させたのではなく、営業・商業的な理由が産業を後押しした。イギリスとは別の発展の仕方であったようだ。



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