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経済学のセンスを磨く

経済学のセンスを磨く』大竹 文雄, 日経プレミアシリーズ, 2015年5月


大竹文雄氏の経済学にまつわるエッセイ集。行動経済学、労働経済学等の知見をもとにした大竹氏の議論は非常に流暢で分かりやすく読みやすい。ただし、細かく見ていくと補足が必要になる議論も多いし、中には少々疑問符をつけざるを得ない議論もある。

すべてを詳細に挙げることはできないが、以下、気付いた点を記述してみる。

1-1.レタス。
これは大竹氏の説明によると市場独占による消費者利益の損失ということなのだが、果たして本当にそうなのか。過剰に生産されたレタスを出荷するにはトラックで出荷しなければならないので固定費は発生するし、レタスは生ものなので市場ですぐに出荷されなければならない。レタスを過剰に出荷すれば、スーパーはその他の野菜を置くスペースが減る。いくらお買い得のレタスだからといって流通させるには限界がある。このためにやむなく流通させることを諦めて処分しているというのが実情なのではないだろうか。

1-2 宝くじ 
宝クジは人を幸福にするという結論。それは良いけれども、純粋に確率論からすると投資に見合う効果は期待できないので合理的に考えるとやはり宝くじは避けるけれども。

1-4. オリンピック
東京にオリンピックを誘致する段階では否定的な方が多かったように記憶しているが、いまはどのような比率になっているか、興味のあるところ。オリンピックは様々な波及効果がある。経済のみならず、政治的にも日本が世界に長期的にコミットしていくことを表明する意味がある。日本の蓄積された価値観を世界に表明できるまたとないチャンス。

1-5.ボーダーライン
これ以外にも、たとえば4月生まれの人は3月生まれの人にくらべて1年近くも成長が早いので、体力や能力の歴然とした違いが発生している。学力や体力、とくに幼年期でそれを判断して優劣をつけるのは危険だ。これは以前から言われている事実。

だが、どこかで「線引き」は必要になる。線引き以外の要素を採り入れると、選考する人による恣意性が含まれることになる。大竹氏の言うように、線引きを時おり見直すことで軽減させるくらいしかない。

2-1.インセンティブ
インセンティブを導入する同様の実験を『その問題、経済学で解決できます。』 ウリ ニーズィー (著), ジョン・A. リスト (著), Uri Gneezy (原著), John A. List (原著), 望月 衛 (翻訳) , 東洋経済新報社, 2014年9月の中で行っていた。人のモチベーションを変化させるための工夫は今後もっと洗練されていくだろうと思う。応用範囲は広い。

3-1.軽減税率はお金持ちに有利
税の抜け穴をつくると、とかく問題が発生するものだ。軽減税率のみならず、直接税でも複雑な抜け穴が多く存在する。それらは、結果的に中間層から富裕層にかけての人々に多くの利益を齎している。

3-5.財政破綻
最近の情勢は国債をリスク要因とみなし保有する銀行に自己資本の積み増しを迫る規制がバーゼル銀行監督委員会にて話し合われていることである。国債に大きく依存する日銀の異次元緩和は、これがネックになる恐れがある。カントリーリスクが破綻寸前のギリシャとは比べ物にならないと日本は言いたいところなのだろうが、前例のない国債発行残高のため規制当局を宥めるのは容易でない。

4.大学は多すぎる?
ここ数十年の大学数の増加は、言い方は悪いが、粗製乱造ではないかと疑わざるを得ない。教授ポストの減少から、新たなポスト創設のために新規の大学・学部を創設した例が多かった。需要要因ではなく、供給要因が主な増加の原因なのであった。ポスドクの就職難も同じ理由だ。指導教員のポストを確保するために、ありもしない需要をでっちあげ、ドクターを増やしてしまった。

大学教育に対する需要は増加しているが、それに見合うアウトプットが日本では得られていないのが実情だ。従来型の講義中心の授業は画一的な産業構造であればそれで間に合っていたのかもしれない。今の時代は創造力、無から有を生み出す力といった力とともに、高度な実務ないしは工学的な応用力が同時に必要とされる。

本来ならば院卒やドクターは日本の競争力を維持するために必要なはずなのだが、日本の企業自体が創造性を発揮していない。だから、彼ら優秀な人材を使いこなせない。従来型の産業構造の発想から抜け出せていないのが一番の問題だ。

創造性を発揮できる産業構造への転換と、それを支える教育システム。両方の転換が必要なのである。


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Kiankou

Author:Kiankou
新書・新刊・社会科学・自然科学・経済・青春小説・エッセイ・思想・教育・児童・絵本・書籍の読書感想、書評、レビュー。
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