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ポスト資本主義

ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来』広井 良典, 岩波新書, 2015年6月


本書は哲学的な視点から資本主義を論じ、現在の社会がストックとしては十分な資本を蓄積しており、従来の方針転換が迫られているという問題認識に立つ。次世代に向かっての新しい価値観のもと社会が模索すべき方向性を高所から論じつつ、具体的な提案を随所に盛り込む。資本主義の齎す弊害を修正し、ローカリズム、エコロジーに配慮した社会を目指すべきとの考え方は論としての一応のまとまりを見せているように思われるが、縮小再生産を目指す社会が果たして具体的な人々の経済的欲求を吸収することが出来るのか、本書だけでは議論が足りていないというのが読後の第一観である。

資本主義という言葉自体、マルクスの社会主義と比較して論じられ創設されたとの認識を私は持っている。ニュアンスとしては搾取者のイメージが強い。本書も資本主義の弊害に触れながら、随所に社会主義的政策を盛り込むことによって初めて資本主義の良い点が維持されるとの論を何度も用いている。トマス・ピケティの r > g 論に象徴されるように、ストックのインバランスが不公平を生み出しているとの認識のもと、修正されるべきとの認識に立つ。この議論はその通りであり、日本では最近相続税が改正され、ストックの公平性を目指す動きがある。

ローカリズム論、エコロジー論は特に本書に限ったものでないが、鉄道や高速道路等のインフラが整備されることでグローバル論への反証として最近重要視されてきている。

これらの論旨に対しては反論の余地がない。ただ、筆者の論は日本の現状の動きつつある方向性を追認しつつ、新しい資本主義の目指す方向性として論じているだけのようにも思われてくる。

私が危惧するのは、日本が世界に発信する思想性が弱まるのではないかとの考えである。明治時代以降の日本は思想性を世界に発信するのが非常に苦手であった。「富国強兵」は単に自分勝手な考え方に立ち、世界に貢献しようなどとの考え方に立つものではなかった。「大東亜共栄圏」も自国の利益を第一に韓・満や東南アジアの資源を自らの配下に置こうとのヘゲモニーに拠って立つものであった。

ローカリズム・エコロジーは一見正しい方向に見えるが、それだけでは世界に日本の思想性はアピール出来ない。筆者はドイツがローカリズム・エコロジーで先行していると考えているようだが、ドイツ社会は激しいヒエラルヒー構造がある。移民に低賃金の労働を分担させ、EUの他諸国へプレッシャーをかけることで、自国の利益を享受しているとの批判が高まりつつある。

日本の新しい思想を世界に広め、日本のファンを増やし、日本の政治・経済活動をよりスムーズに進めるためにも、現状の経済状況に満足せず、日本の良さを発信する仕組みが必要だ。このためにはローカリズムやエコロジーといった内向きな自己満足に止まることなく、日本の「価値観を売る」経済・文化活動が必要である。



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Kiankou

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